No.015
[ 曇 天 ]


Scene04
ヴェルクザファイヤー


和夫にライト。

手にはヴェルクの被り物。

和夫
父さんからメールが来たあの夜、僕はヴェルクの頭を持って本社に駆けつけた。 僕が考えたこのキャラクター「ヴェルク」が最終会議に残ったからだ。僕が広告業界に入って8年、初めて与えられたビッグチャンスだった。
僕は独創的でオリジナリティのある広告やCMを作りたい!第2の糸井重里になりたい!!そう思って業界に入ったのに、僕の企画やキ ャッチコピーは、1番はじめの会議でことごとく落選していた。だからいつも他人の企画の補佐や雑用ばかり・・・・ 後輩がどんどん有名な企業のCMを作ったりしているのに。本社に着くと、部長はヴェルクを指さしこう言った。

便軽
咲間くん。それ、なんだっけ?

和夫
あ、ベンガル部長。これはですねぇ。ヴェルク、っていうキャラクターです。

便軽
ふーん。それ何語?

和夫
ドイツ語で、「山」を意味しています。

便軽
山ねぇ。面白いがるなぁ。

和夫
この頭は富士山をイメージしていてですね、怒るとここんとこから噴火したり-----

便軽
それ、どんな広告に使えそうなの?

和夫
え?山ですからねぇ、登山用品のキャラクターとか、火災や噴火の保険、 あとは山のおいしい水とか、温泉とか岩盤浴とか。

便軽
んー、でもなんかこのキャラ、パンチがないんだよなぁ。

和夫
パンチですか。

便軽
そうだ、悪いやつって事にしてみようか。

和夫
え?でもそんなのCMに使えますか?

便軽
清潔なマジメちゃんキャラばっかりで飽き飽きしてたがる。ここは1つ、 こいつは悪役キャラで押してみたいがる。

和夫
悪役キャラですか。

便軽
そうがる。とりあえず次の最終会議に出すしたいから、来週までに、 かっこいい必殺技とかキャッチコピーとか考えてみて。

和夫
来週、ですか?

便軽
うん。よろしくがる。

と、便軽去る。

和夫
初めて与えられたチャンス!僕は絶対に逃したくなかった。
でも僕は、ひとりで考え込んでも、なかなかアイディアがわかないタイプの人間だった。だから父親が帰ってこいと言 うのも、役柄を変えると言う変な提案も、丁度良いと思った。
ところが咲間家にいても落ち着かず、未だ必殺技のひすら思いつかない。そこで僕はふと考えた。今までマジメに生 きてきた僕に、悪役キャラなんてわかるはずがない。そうだ、一度、悪役であるヴェルクになりきってみよう!

音楽に乗せて、和夫がヴェルクのマスクをかぶる。

和夫
我が名はヴェルク。
この腐った日本を、より腐らせて、腐りかけた納豆のように、いや、発酵しすぎたチーズのように、良いモノなのか悪いモノなのかわけ分からない、善悪の区 別無い混沌とした最悪な世界にして見せよう。うぃーっひっひ。 日本を腐らせるにはまずは子どもから。子どもにわるーい事を教えてやるのだ。

とそこへテルとクミが現れる。

テル
クミ、お前いくつになった?

クミ
んーとぉ、0、1、2、4しゃい。

テル
クミ、2の次は3だぞ。

クミ
じゃあ0、1、2、3、4しゃい。

テル
あれ、パーは5才のはずだぞ。お兄ちゃんがパーの5才だもん。

クミ
あ、お兄ちゃんはくるくるパーなの?

テル
え?え?パーだよ。パーの5才。くるくるなんて言ってないよ。

クミ
だって、ユミちゃんがくるくるパーって言ってたよ。

テル
ユミちゃんって僕が好きなユミちゃん!?

クミ
うん。

テル
・・・しゅん。

クミ
と言うことで、私たちは幼稚園児です。

テル
この図体ですが、これくらいの身長の可愛い子どもだと思って僕たちを御覧下さい。

2人
よろしくお願いします。

ぽかんとするヴェルク。

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