No.015
[ 曇 天 ]


Scene02
スナック葵


夜道を歩く父。


月が出ているはずなのに、その姿がドコにも見あたらない。
雲が厚く、夜空を覆っている からだ。こんな、傘がいるのか、いらないのか、よく分からない天気がオレは嫌いだ。
こんな天気は思い出したくなくても思い出してしまう。事故の様子が記憶に蘇る。 冷たくなった肌の感触を思い出す。
オレは、いても立ってもいられず、つい飲みにいってしまう。

所変わってスナック葵。

ママが1人でタバコを吸っている。


ママ、久しぶり。

ママ
あら、咲ちゃん。お久しぶりぶり、だっぷんだ。


・・・ママ、変わらないねぇ。

ママ
咲ちゃん全然顔見せないから、心配してたのよ。


またまた。でもありがとね。

ママ
ホントよ、どっかでのたれ死んでるか、再婚相手でも見つけちゃったのかと思ってたのよ。


んー、そりゃどっちもハズレだね。

ママ
ならよかった。いつものでいい?


あぁ、頼むよ。

ママ
どうしたの?いいことあった?


ん?まぁ、いいことかどうか良くわかんないけど、変化はあったねぇ。

ママ
あら変化があるのは良い事よ。聞かせてくれる?


いや、なんて言うか、ちょっと恥ずかしい感じの事でね。

ママ
なんだやっぱりいい人出来ちゃったんじゃない。


いや、本当にそういうのじゃないから。

ママ
じゃあなんなの?その変化って。(と、グラスを差し出す)


ありがと。ママ、オレね、明日から娘になるんだ。

ママ
娘に、なる?


あぁ、オレがね、娘になるんだ。

ママ
・・・・あらやだ。咲ちゃん、そう言う趣味があったの?


いやそう言うんじゃなくてね、娘というのは、オレの娘でね、あ、下のコね。

ママ
朝子ちゃんだっけ?


そうそう。

ママ
可愛いんでしょ?


あぁ、まぁ末っ子だからねぇ。

ママ
うぅん、見た目も。


まぁ父親のオレから、可愛いというのも何だけどさ、まぁ普通か、ちょっと下か。

ママ
可愛いわよ。


いやそこまで、

ママ
可愛いわよ。ね?


・・・・可愛いです。

とそこへ望がやってくる。


ママ〜、どこ探しても『フリスク』売ってなかったです。

ママ
あらぁ、困っちゃうわねぇ。どうしてもスースーしたかったのに。


だから代わりに『スナイパー』買ってきました。

ママ
望ちゃんナイス!これで鼻孔通りまくりね。あ、咲ちゃん、この子、今日から葵の仲間に なった望ちゃん。こちら、常連の咲ちゃんね。


咲間です。


望です。

2人
よろし------!!

父、望、共に固まる。

ママ
なに?2人とも変なトコで止めちゃって。それ流行ってんの?

2人
え?


いやちょっと、びっくりしてね。

ママ
どうしたの?


似てたんだ。若いときに。


私、誰かに似てるんですか?

ママ
いやだ咲ちゃん、いきなり新人口説かないちょうだいよ。


いやママ、そう言う訳じゃないよ。本当なんだ。

ママ
んじゃ誰に似てるのよ。


えと、-------昔、好きだった人だよ。

ママ
ほらやっぱり口説いているんじゃない。私そんな事言われたこと1回もないわよ。


でも本当なんだよ。ごめんね、変な意味じゃないからね。


いやそんな。でも咲間さんも、私の知っている人に似てるんですよ。


ホントに?

ママ
またまたぁ。誰に似てるって言うのよ。


えと、・・・お、お父さんです。


お、お父さん?

ママ
あら残念。ぷぷぷ。


いやむしろおじいちゃんて言われなくて良かったよ。


すいません、変な事言っちゃって。


全然。そんな近い人だと思って貰えるなんて嬉しいよ。大体オレは望ちゃんからしたら、 お父さんくらいだろうしね。


そんな、咲間さんは私のお父さんより若く見えますよ。


ママ、いい子見つけたね。

ママ
でしょ?私人を見る目はあるのよね。


ありがとうございます。


こっちの人なの?

ママ
東京から来たのよ。都会っ子なんだから。


へぇ、なんでまたこんな所に。


ちょっとご縁があって。こんな素敵なお店も見つけちゃったので。


東京からよく見つけたね。こんなちっちゃなお店。

ママ
しつれいしちゃうわねぇ。ちゃんとホームページあるし、私ブログやってたりするのよ。


え?ホント??


はい。私、ネットでこのお店知ったんです。ママのブログ、おもしろいんですよ。 『千恵子ママのよろちくびーむ!』

ママ
毎日更新中よ♪


へぇ。ケータイでも見れる?

ママ
もちろんよ。是非購読してちょうだい。これ新しいお名刺。ココのQRコードからどうぞ。


あ、ありがとう。ってかこの顔写真すごい気合い入ってるねぇ。髪もサラサラじゃん。

ママ
自慢の1枚よ!望ちゃんも今度お名刺作ってあげるわね。


ありがとうございます。

ママ
あらもうこんな時間。私ちょっくらヘアセット寄って、お客さんのお迎えに行ってくるか ら。んじゃお知り合いにそっくりさん同士仲良くね。咲ちゃんごゆっくり。

と、ママは出て行く。


すいません、新人なんかと1対1になっちゃって。


いやいや、オレは全然うれしいよ。


あ、お酒作りますね。それって・・・ブランデーですか?


あぁ、そんなんだけど、ちょっとベイリーズが入ってるんだ。ほら濁ってるだろ。


ホントだ。ベイリーズって、甘いお酒ですよね。


そうそう。オレ、お酒は甘い方が好きでね。ブランデーのロックにちょっとだけベイリー ズ入れたのを作ってくれる?


はい。わかりました。さっき、ママと何話してたんですか?


え?


私が帰ってくる前。楽しそうな声が聞こえてたから。


あー。ちょっと、おかしな話なんだけどね。


ママの代わりにならないと思いますが、良かったら是非聞かせて下さい。


聞いてもらっちゃおうかなぁ。

楽しそうな雰囲気で会話がつづく。

ゆっくりと暗転。

Scene03-1へ


※無断転載、無断複写を固く禁じます。上演許可申請の際はお問い合せよりメールを下さい。

上へ戻る
目次へ戻る
台本一覧へ戻る
TOPへ戻る

fuzzy m. Arts