No.013
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Scene04
3ヶ月前


ケイ子さんの語り。

ケイ子
助六てのは変な名前だろ。安い寿司と同じ名前。
「お寿司お食べ」と言われて、喜んだのもつかの間、魚が1つものってない助六寿司が出てきてガッカリした覚えは誰でもあるだろう。
でも、ヤツの名前はその寿司から付けられたのさ。ヤツの父親は、頑固で無口な寿司職人の1人だった。


無口で結構。寿司はクチじゃなくて、手で握るもんだ。

ケイ子
それがオトコの口癖だった。


あの、それ、残すんだったら食べてもいいすか?

ケイ子
それもオトコの口癖だった。


エコだよ。エコ。

ケイ子
そんなオトコも、ある時、店のなじみのホステスに恋をしたのさ。


なぁ、このうまい寿司を握る腕は金じゃ買えねぇよな。


そうね。


これをお前にやる。だから、オレと、一緒になってくんねえか?


何言ってんのコトさん。あたしのお客、すぐに戻ってくるわよ。

ケイ子
とホステスはオトコを笑った。


うちの大将は奥で相撲見てる。今すぐ逃げちまおう。


それは本気?


本気の本気だ。もう我慢ならねぇ。


しょうがないわねぇ。

ケイ子
2人はそのまま店を飛び出した。
すぐに町を出て、2人で小さな寿司屋を始めた。それからしばらくして。


あんた、ガキが出来ちまったよ。


そりゃめでてぇな。籍を入れよう。


しょうがないわねぇ。

ケイ子
そうして2人は結婚し、子どもが生まれた。


あんた、「なをみち」ってどうかしら。


だめだそんな名前。色白で胃腸が悪そうだ。


ならどうするのよ?


誰にでもかわいがってもらえるようによ、助六だ。寿助六だ。


しょうがないわねぇ。

ケイ子
寿司屋は儲からず、生活はギリギリだった。

父&女
ギリギリです。(ひもじそう)

ケイ子
それでも3人は幸せに暮らした。

父&女
幸せです。(幸せそう)

ケイ子
しかしある時、


もう生活できない。あたし、働きに出るわ。


すまんな。

ケイ子
そうして女はホステスに復帰し、しばらくして言った。


あんた、オトコが出来ちまったよ。


・・・・そりゃめでてぇな。籍を抜くか。


しょうがないわねぇ。

ケイ子
そして元の無口なオトコに戻っていった。


無口で結構。寿司はクチじゃなくて、手で握るもんだ。

ケイ子
しかし皮肉な事にそれまで傾いていた寿司屋は軌道に乗り始めた。


ふん。今頃。

ケイ子
そして助六は中学生になった。

助六
父ちゃん、最近酒の量が増えすぎだよ。


------なぁスケ。

助六
どしたの?


お前の母ちゃんはな、おっぱいの形が良かったよ。

助六
なにその話?


オレはバカだった。お前はな、大切な人を、簡単に逃すんじゃねぇぞ。

助六
え?


たとえ多少かわっちまっても、あっさり手放したりなんかするんじゃねぇぞ。

助六
わ、わかったよ。

ケイ子
翌年父親は、飲み過ぎがたたって、肝硬変であっさり死んだ。
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