No.013
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Scene03
再会


単サスの中の助六。

思い出を振り返る。


助六
オレは、あの日もラーメンを茹でていた。ラーメンの茹で方なんてのは、そう難しいモノじゃない。

ケイ子
難しいのはね、網を引き上げるタイミングなんだよ。
でもそのタイミングは時間ではかるモノじゃない。 麺が、あげてくれと言わんばかりに急に踊りを変えるのさ。その瞬間に一気に引き上げるんだよ。

助六
とケイ子さんはオレに言った。
麺が踊りを変える。そりゃ、茹でれば何となく踊ってる感じはするけど、さすがにそれが変わった瞬間と言われると、オレも最初は戸惑った。フツウ、麺を茹でる上で、一 番大事なのは茹でる時間だ。だから、その麺ごとに決まった時間茹で上げ、引き上げればいいに決まっている。今じゃ料理人の感覚よりもタイマーでその時間をはかる店だって少なくない。しかし、ケイ子さんは言った。

ケイ子
麺は生き物さ。毎回麺によって、茹で上げる時間は少しずつ違うんだよ。微妙に違う重さや乾燥の具合、空気や湯の沸き具合で、10〜20秒もの幅で違いが出るのさ。

助六
素人は、どうせ、食べるまでの時間があるから茹でるその数十秒の時間の差なんて関係無いだろうと思うだろう。要は、麺は湯に浸かってるから、クチに入るまでに伸びてしまうだろう、なんて考えてしまうんだ。
でも、ケイ子さんの考えは違った。

ケイ子
茹で上がった麺を引き上げ、空気に触れさせたその瞬間だよ!その瞬間に麺は産声をあげ るのさ。だから空気に触れさせるまでのそのタイミングを誤ると、その麺の一生は台無しになっちまう。だからココロして、その間を麺から聴き取るんだよ。

助六
ケイ子さんの言うとおり。絶妙なタイミングで引き上げられた麺は、その後つゆに戻して もそう簡単にのびたりはしないんだ。だから、オレはあの日も、その瞬間を見極めるため、 せっせと麺と格闘していた。そんな時にマキちゃんはオレに声をかけた。

マキ
-----あの。

助六
聞こえてはいたが、返事をしなかった。オレの仕事は麺を茹でること。
客の相手をすることじゃなかった。だからそのうちケイ子さんが相手をするだろうと思っていた。 マキ
あの、いつも「すごい顔」して麺をあげてますよね。

助六
え?

マキ
あ、あつう!?

助六
絶妙のタイミングで網を引き上げたはずが、オレはマキちゃんの声に気を取られ、勢い余ったその麺は、マキちゃんの顔面めがけて飛んでいった。あ!?す、すいなさい!!

マキ
え?!

助六
オレは思わず、「すいません」と「ごめんなさい」がごっちゃになって「すいなさい」と 言ってしまった。なのにマキちゃんはオレの間違いに気づかず、麺を数本吸いあげた。

マキ
わ、すごいおいしい!

助六
そ、そりゃ、絶妙のタイミングで引き上げたからね。客に麺をぶつけといて、オレは何を 言ってるんだ。あの、ごめんなさい。大丈夫でしたか?

マキ
それで、あんな顔をしてたんですね。

助六
え?あ、すごい顔?

マキ
その、--------一生懸命で、かっこよかったんです。

助六
それがオレとマキちゃんとの出会いだった。近くのピザ屋に勤めていたマキちゃんは、それから時々ランチタイムに食事に来てくれた。オレはマキちゃんの為に麺を茹でた。

と、現れるブービー。

ブービー
フライングラーメン、マキ顔面。直撃惨劇、すいなさーい!らびゅっ!

助六
人の思い出を勝手に変なまとめ方するなよ。

ブービー
YOYOYO、ラップはパッションだ。ごちゃごちゃ言うヤツゴートゥヘル!!

助六
お前、フツウに話せないのかよ。

ブービー
YOスケ。まだカラダに戻らねぇのか?

助六
戻らない、というか、わからないんだよ。幽体離脱したときのカラダへの戻り方なんて聞いたこと無いだろ?

ブービー
YOYO、何もやらずにあきらめるのはナンセンスだゼ。

助六
でもどうやって?

ブービー
そりゃまずは1回飛ぶんじゃないか?

助六
飛ぶ?

ブービー
イエス!それでふわーっといって、ひゅーんって感じになって、シャキーン、ぴきーんって目覚めるんだYO。

助六
ホント、ブービーって頭悪そうだよな。九九言えないだろ。

ブービー
わっと?

助六
ニク。

ブービー
食べたい。

助六
九九っつってんだろ。

ブービー
つい。

助六
てかオレたち飛べるのか?

ブービー
いや、オレは飛べないぞ。

助六
え?

ブービー
ほら、オレはさぁ、その、これじゃん?

助六
あぁ。

ブービー
納得するなYO。屋上から飛んでみたらそのまま落ちたんだよ。

助六
それでぽいーんって。

ブービー
うん、ぽいーんて、弾んでない!

助六
オレだってね、何とか入れないかと思って、手、脚、頭、いろんなところから突っ込んでみたけどダメだったんだよ。

ブービー
ひょっとして、オレなら入れるかも知れないぜ?

助六
無理だろ。本人がダメなんだぞ。

ブービー
ダイエットも出来て一石二鳥だ。

助六
まだそんな事言ってんのか。やめろよ!なんかはちきれそうだろ。

ブービー
はち切れる?

助六
絶対入りきらないだろ!

ブービー
そ、そんな!そこまでデブじゃないもん!!

走り去るブービー。

助六
なんだよあのデブ幽霊。てか、全然死んでる感じしないなぁ。オレと同じでどっかで寝てんじゃないのか?

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