No.012
[A day in the Life]


Episode05
[カザリのカラダ]


車の中。
時間はもう夕方になっている。


若旦那
それで、堤防に行くのはいいけど、その女の子は知り合いなの?

ミミズクK
知り合いって言うかなんて言うか、私そのものな感じ。

若旦那
え?

ミミズクK
ん?まぁ、大事な友達、親戚、なの。

若旦那
昨日の新聞に載ってた子だよね?意識不明の重体の子?

ミミズクK
え?重体??ちょっと溺れただけじゃないの?

若旦那
僕には状況はわかんないけど。

ミミズクK
どうしようどうしようどうしよう・・・。

若旦那
身元不明ってなってけど、ミスズさんの親戚だったんだ。ねぇ、ちょっといい?

ミミズクK
何?

若旦那
ねぇ、救急車で運ばれたなら、病院に行ったら?

ミミズクK
え?

若旦那
堤防に行っても、そのままいないよね。

ミミズクK
あぁ〜ホントだ!抜けてた!元の場所に戻るべきだって勝手に思ってた。

若旦那
病院でいいよね。

ミミズクK
でも、病院って言ったって、でもドコの病院かわかんないよ。

若旦那
この町の病院なんて「殿山医院」しかないから。

ミミズクK
あ、そうなの?!ソコ、連れてってくれる?

若旦那
うん、そう思って、病院に来た。

ミミズクK
え?すごい。

車を止める若旦那

若旦那
ミスズさん、なんだか興奮してたから、わかってないのかと思って。

ミミズクK
ありがと!じゃ、ちょっと待ってて。

若旦那
あ、待って。

ミミズクK
え?どしたの?

若旦那
あのさ、聞いて欲しい事があったんだ。

ミミズクK
え?今?今じゃなきゃダメ?

若旦那
いや、ずっと言いたかったんだけど、言えなくて。

ミミズクK
そんな重要な話、私にしないでよ。

若旦那
ミスズさんにしないで誰にするんだよ。

ミミズクK
そう言われても困るし、あ、戻ってからにして。すぐだから。

若旦那
ちょっと、待って。

と、若旦那がミミズクの手を取る。
カザリが移る。


ミミズク
あれ?ココどこ?

若旦那K
え・・・

ミミズク
若旦那、どうしたの?

若旦那K
----病院に、お見舞いに来たの。

ミミズク
あ、そっか。あ〜なんか、そんな気がする。

若旦那K
ちょっと、待っててくれる?

ミミズク
ココで?いいけど。あれ?さっき、私に何か言おうとした?

若旦那K
うぅん。何もない。すぐ、戻ってくると思うから。

ミミズク
わかった。早くしてよ〜。

若旦那K
ねぇ、この人、私の事、好き?

ミミズク
何言ってんのよ。

若旦那K
いなくなっちゃったら、困る?

ミミズク
-----アタリマエじゃない。私は、若山がいないと生きてけないよ。

若旦那K
本当に?

ミミズク
うん。大好き。

若旦那K
私が後で戻ってきたら、もう一回それ言って。

ミミズク
どうして?

若旦那K
いいから。お願い。私も、お姉さんの事、好きだから。この人の事も。

ミミズク
何言ってるの?

若旦那K
お願いだから、ちゃんと言ってね。

出ていく若旦那K。

-------暗転。






【どうしよう】




【この人、あの人の事】





【あんまり好きじゃない】





殿山医院。

ユキヒコ
私は、この医院に収まる前には多くの患者を診てきた。
生まれた時から呼吸器をつけたまま生活を送る少年。小さな子を持ちながらも白血病になり、それでも尚、子どもの行く末をあんじる母親。病床の経過をブログに綴る末期のガン患者のご老人。
病気とは、一体何なのだろう?これほど、不平等に与えられる贈り物はない。私はそう思う。
父は年に一度の残暑見舞いでこう書いてきた事がある。「この島の人間は病気をしない。診療所に来るのは小さな怪我ばかりだ。」と。それは本当であり、嘘なのだろう。父はおそらく、病気を診ないのだろう。診て診ないふりをしているのだ。島には情報もなければ知識もない。だから、死人がでれば、それは全て自然死として扱われるのだろう。
自然死、何をもって自然な死というのかはわからない。老衰が自然死なのか?病死は、自然死なのか?事故死は自然死なのか?死人を前にすると、私はいつもそんな事を考えてしまう。

と、若旦那Kが現れる。

若旦那K
すいません!

ユキヒコ
あ、若山さん。どうされたんですか?また、聞こえました?

若旦那K
いや、そうじゃなくて、お見舞いに。

ユキヒコ
お見舞い?あ、そうですか。どうぞどうぞ、どなたのですか?

若旦那K
あの、風間ミドリです。

ユキヒコ
風間、さん?そう言ったお名前の方は、入院患者さんはみえませんけど。

若旦那K
えっと、ここに、昨日運ばれてきた、女の子です。

ユキヒコ
え?

若旦那K
ドコに、いますか?救急車で運ばれた子です。

ユキヒコ
あの、まだ、身元がわかっていないのですが、若山さんとはどのようなご関係ですか?

若旦那K
どのような?

ユキヒコ
えぇ、それをお伺いできないと。

若旦那K
えっと、それ、私なんです?

ユキヒコ
若山さん?

若旦那K
それ、私なんです、なんて説明したらイイかわかんないけど、魂が抜けちゃって、今、この人のカラダを借りているんです。早く、自分のカラダに戻らないと、死んじゃう気がして。

ユキヒコ
若山さん、今話してるのはあなたですか?幻聴ですか?

若旦那K
私は、風間ミドリです。

ユキヒコ
若山さん、落ち着きましょう。あなたは聞こえている幻聴を自分だと錯覚しています。このまま会わせる事は出来ません。

若旦那K
そんなことないです。

ユキヒコ
そんな事あります。

若旦那K
もぉ!なんでわかってくれないのよ!!私はドコにいるの!?

と、ユキヒコを突き飛ばす若旦那。
倒れるユキヒコ。
カザリが移る。


若旦那
あれ先生?大丈夫ですか?

ユキヒコK
・・・・はい。

若旦那
あの、ミスズさん来ました?

ユキヒコK
いや。

若旦那
なんで、僕が。失礼しました。あのミスズさんが、こないだ運ばれた子に会いたいって。

ユキヒコK
外に、いると思う。

若旦那
あ、そうですか。あれ?呼んできます。

出ていく若旦那。

ユキヒコK
うそ----私、死んじゃったの?うそ、そんな、まさか・・・。大丈夫だよね、大丈夫だよね。心臓止まっちゃっただけで、触れば入れて、元に戻るって。そう言う話なんだよね。そう言う事なんだよね。

霊安室にたどり着く。
おそるおそる布をめくるユキヒコK。


ユキヒコK
-----違う。この子、私じゃない。この子は誰?どういうこと?私のカラダは??私は、私はあの時・・・。ココは、一体ドコなの?どういう事?ココは・・・・殿山病院?私が生まれた病院?私が生まれた街??この子は誰?私は、一体・・・

頭を抱えるユキヒコK。

ユキヒコK、倒れる。

カザリの魂がつぶやく。


カザリ(声)
私はあの日、電車に乗って、どこかへ行こうとした。どこかはどこでも良かった。今いるところから逃げ出したくて、それで、何時間か乗ったあと、大きな川が見える駅で電車を降りた。
そこは、なんだか懐かしい雰囲気がした。私は、ぼんやりと川沿いの堤防を歩いた。川の流れをもっと近くで見たくて、岸へ行った。靴も脱がずに、岸に沿って水の中を歩いた。春の川の水はまだかなり冷たかったけど、しばらく歩いてたら、だんだん感覚が無くなっていった。
陽が落ちはじめていた。あぁ、このまま頭の先まで浸していってもかまわない、なんて思えた。腰まで水に浸かると、全身がしびれていくようだった。
ゆっくりと、水の中を歩いた。
自分が溶けて流れていくようだった。

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※無断転載、無断複写を固く禁じます。上演許可申請の際はお問い合せよりメールを下さい。

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