No.011
[始マリノ終ワリ]


Episode04
World

マナブの世界の創造と世界征服と、
それらの妄想と現実。





【Episode04】




【マナブ】




【世界ノ始マリ】




マナブの姿が浮かび上がる。
ブツブツつぶやきながら、何か小さなものを作っている。


マナブ
---僕の1日は、ネットから世界のニュースを見る事から始まる。今の世の中を常に知っていないと、変わりゆく世界を理解できないからだ。変わりゆく世界を理解できなくては、僕が創ろうとする新しい世界はその変化の中で誕生しないからだ。 SEである僕の趣味は、機械いじりだ。仕事とは直接関係ないが、人工知能やロボットのシステム構築には昔から興味があって、独学で勉強をした。そしてそれは単なる機械いじりではない。僕の考えたモノは、世界征服への布石となるものだ。人類全てを監視する、マイクロロボットを作っている。そしてそれはただのマイクロロボットではない。僕が作っているのは、自己増殖するマイクロロボット、つまり彼らは自分でその仲間をつくり、無限に増えていくのだ。あっといまう間に世界人口に達し、僕はそれを管理する。それで、世界を征服できる。

松男現れる。

マナブ
僕は、とりあえず、マイクロロボット第1号を完成させた。カタチが中学生の時に習った、マツの 花粉に似ているので、「松男」と名付けた。

松男
あ、どうも。松男です。よろしくお願いします。

マナブ
礼儀正しいのはいい事だ。どんな事に対しても礼を尽くす僕は天才だと思う。

松男
あの、オレ様はこれからどうすればいいんですか?

マナブ
あ、松男はオレ様とか言わなくていいんだよ。

松男
そうですか?

マナブ
あぁ、僕、とかでいいよ。

松男
かしこまりました。これからは一人称は僕でいきたいと思います。それで、僕はなにをすればよろしいのですか?

マナブ
まずは、自分のコピーを作るんだ。そしてそのコピーに自分のコピーをつくらせるんだ。

松男
わかりました。プログラムどおりですね。

マナブ
そうだ。僕は松男をひとつ作るだけで、松男はどんどんコピーを作り、そのコピーから無限にそのコピーを作らせるんだ。

松男
かしこまりー。

マナブ
礼儀正しくしろ。

松男
固い人ですね。

マナブ
え?

松男
かしこまりました。それで、どんどん増えて、その後はどうすればいいんですか?

マナブ
ある程度の数に達したら、人間ひとりひとりに割り当てる。そして、それを管理するまとめ役をつくり、そしてそれをさらに管理しろ。つまり社会をつくるんだ。そのトップに松男が立て。僕は松男に指示を出す。松男はそれをみんなに伝えろ。

松男
了解です。1つコピーを作るのに、2分です。

マナブ
この町の人口に達するまで何分かかる?

松男
26分程です。

マナブ
わかった。とりあえず、そこまで増殖しろ。指示はそれからだ。

松男
はい、松男がんばります。

マナブ
良し。じゃあまず材料を自分で調達しろ。

松男
えー。

マナブ
なんだ?

松男
かしこまりました。では行って来ます。

と、横になる松男。

マナブ
まさか、さぼってないよな。

松男
もぉ、見てないで下さいよォ。今行こうと思ってたとこですよォ。

マナブ
さっさと行って来い。

松男
はぁい。

出て行く松男。

マナブ
時々僕は、ものすごいジレンマに陥る。僕は天才だと信じられる思いと、そうではないどこにでもありふれた人間であるという自覚の交錯だ。僕から見たこの世界は、僕の目からしか見られないし、それは僕中心の目の見方だ。どんなに世間が認めた芸術や世紀の発見があろうとも、自分に興味がなければ、それに対して何の意味も見いだせない。だから僕は世界に興味を持ち、世界を把握しする。そうすれば、僕の世界は、本当の世界まで広がる。

僕の創る世界は平和な世界だ。とても、純粋に、平和な世界なんだ。全ての人間を監視し、悪事をはたらかせない。悪いやつらは、片っ端に駆除していく。だから、僕の世界征服は悪い事ではないはずだ。僕は誰も虐(しいた)げない。誰も争わせない。誰も傷つけさせない。だから、誰も、傷つかない。誰もが幸せにすごせる。誰もがお互いを認めあえる。そんな世界が創りたいんだ。そんな世界をみんなが求めているんだ。

と、そこへまやが現れる。

まや
ねぇお兄ちゃん。

マナブ
どうした?急に入ってくるな----

まや
ノックしたけど、ずっとなんかぶつぶつ言ってたじゃん。

マナブ
そんなことはない。

まや
この部屋クサイ。

マナブ
え?

まや
なんか、変な臭いするよ。スイカの汁みたいな。

マナブ
それ、かなりクサイくないか?

まや
だからクサイんだって。スイカどっかにしまってる?

マナブ
しまうわけないだろ。大体ドコにおいておく、この狭い部屋の中に。

まや
だって、お兄ちゃん、スイカ嫌いでしょ。

マナブ
嫌いだから隠したというのか?僕は子どもか。大体もう11月だ。

まや
いつからおいてるの?

マナブ
だからドコにもない。スイカなんて。

まや
早く臭いの元探して始末した方がいいよ。・・・あ、そうそうお兄ちゃん、善一郎って知ってる?

マナブ
いや・・・。

まや
おばあちゃんのはじめの旦那さん。聞いた事ない?

マナブ
あぁ、その善一朗か。少しだけ、聞いた事がある。確かマイウェイの。

まや
うん、それさっき聞いたんだ。・・・まぁいいや。

と、出ていくまや。

松男、戻ってくる。

松男
こちら松男こちら松男。お兄ちゃん応答願います。

マナブ
僕は君の兄ではない。

松男
先ほどそう呼ばれていたようだったので。なんと呼んだらよろしいですか?

マナブ
ご主人様、かな。

松男
かしこまりました。ご主人様。

マナブ
それで、どうかしたのか?

松男
ご主人様が自分の世界に入っている間に、結構、子松男を作ることが出来たのですが、置いとく場所がなくて。

子松男  おとーちゃんおなかすいたー。

松男
はいはい、ちょっと待ってね。ご主人様、僕っておっぱいでますか?

マナブ
出ない。出るわけがない。

松男
そんなぁ、僕の子ども達をどうしてくれるんですかー?つくるだけ作らせといて、無責任です。

マナブ
君達はわずかな光で発電できるはずだ。何かを食べる必要はない。

松男
そうなんですか?僕たちすごーい!

マナブ
スゴイのは君たちじゃない。君たちを創った僕だ。

松男
もぉ、ナルシストなんだからぁ。

マナブ
子松男を置いておけないなら、近くにいる人間から監視を始めさせてくれ。

松男
かしこまりましたご主人様。はい、みんな、おんもに出ましょーねー。

松男、出て行く。

マナブの回想。

電話をしているマナブ。


マナブ
君の名前は、どうしてアイルって言うの?

アイル(声)
どうしてって?

マナブ
名前の由来?意味、みたいな感じ、かな。変わってるから、前から聞きたかったんだ。

アイル(声)
マナブは?

マナブ
僕は、そのままだよ、よく学ぶ子になるように、だよ。

アイル(声)
そうなんだ。よく学んだ?

マナブ
そうだね、多分、ほどほどにね。それほど勉強は嫌いじゃないし。

アイル(声)
そっか。

マナブ
それで、アイルは?

アイル(声)
私のは、ちょっと、恥ずかしいから。

マナブ
教えてくれないの?

アイル(声)
そんなことはないけど。

マナブ
じゃあ教えてよ。

アイル(声)
えとね、「 I will 」からだよ。

マナブ
え?

アイル(声)
I will だって。英語の「私はなになにするつもり」みたいな、未来形の。

マナブ
するつもり?

アイル(声)
そう。希望的な名前、だよ。ちょっと恥ずかしいでしょ。

マナブ
そんな事無いよ。I will か。いい名前だね。

アイル(声)
でしょ。お父さんとお母さんが私に未来を託してくれたの。そう思ってる。

マナブ
そか。そうだね。お父さんもお母さんも誇らしいと思うよ。アイルは頑張ってるし。

アイル(声)
まだまだこれからだよ。

マナブ
お互い、頑張ろうね。オレ、5年くらいしたら独立したいんだ。

アイル(声)
ホントに?頑張ってね、応援してる。

マナブ
その頃はアイルは売れっ子カメラマンなのかな?

アイル(声)
そんな事ないよ。私、報道やりたいもん。

マナブ
報道カメラマン?

アイル(声)
うんうん、そういうの。

マナブ
事件の写真を撮っていくの?

アイル(声)
そう。過去にしてはいけない出来事を、写真に撮っていきたいの。

マナブ
カッコイイね。

アイル(声)
そんな事ないよ。どんなに、事件や事故があっても、また新しい事件や事故が起こるでしょ。でも、いつか全部撮り尽くせたら、事件や事故は減ると思うの。

マナブ
そうだね。

アイル(声)
私、ツライ事や悲しい事を撮りながら、それを減らしていきたいと思ってるんだ。

マナブ
出来るよ、アイルなら。

アイル(声)
うん、ありがとう。

回想終了。

マナブ
アイルはしっかりとした考えを持った人だった。大学を中退後、独学で写真を学び、カメラマンのアシスタントをしていた。僕が彼女に出会ったのは、雑誌の取材だった。背の低く小さく見える人だったが、芯があって、気の強そうな人だと思った。僕は彼女に一目惚れというのか、二目惚れというのか、何度か会っていくうちにどんどん好きになっていた。
そして僕たちはつき合い始め、2年が経過していった。彼女の仕事は順調で、僕も今の仕事に満足し、お互いの人生が順調だった。アイルには未来があった。僕らには未来があった。希望があった。続いていくはずの時間があった。それなのに・・・松男、・・・松男!

松男
松男です。まだ予定の時間ではないと思いますが。

マナブ
どれくらい出来た?

松男
おやつを食べてお昼寝していたので作業が少し遅れています。

マナブ
なんでサボるんだ。

松男
僕だけじゃないです。みんなです。

マナブ
お前がそれを注意してまとめるんだ。

松男
それで、何のようですか?

マナブ
一言ないのか?

松男
ごめんね。

マナブ
やり直し。

松男
僕・・・マナブのことが好き。

マナブ
そういうのを求めてるんじゃない!

松男
え?違うんですか。ごめんなさい。

マナブ
それ!そうやって普通に謝ればいいんだ。

松男
気を付けマッスル。

マナブ
・・・松男に、頼みたい事がある。

松男
無理だと思いますが、一応聞いてみます。

マナブ
じゃあ一応頼んでみる。

松男
それが人に頼む態度ですか?

マナブ
もう、壊そうかなぁ。自爆ボタンとかあるんだけど。

松男
よっ!大統領!!何でも言ってごらんなさいよ、松男がんばっちゃいますよ!

マナブ
アイルを殺したヤツを捜してくれ。

松男
え?

マナブ
なんでもいい。手がかりを探すんだ。

松男
かしこまりました、ご主人様。

マナブ
行くんだ。僕の世界を、取り戻してくれ。

音楽。

子松男、舞台を飛び回る。


客席へと子松男を配り回る松男。

-----暗転




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