No.011
[始マリノ終ワリ]


Episode03
Love

まやは恋に恋する17才。


まや、人に聞いて回る。
旅に出ようとする木村に会う。


まや
すいません、善一朗という名前のおじいちゃん知りませんか?

木村
え〜それだけじゃよくわからないヨォ。

まや
えっと、芸達者コンテストで、ウクレレ持ってマイ「マイウェイ」を歌う人なんだけど。

木村
すごい手がかりのようだけど、わかんないヨォ。芸達者大会なんて5年くらいまえからやってないだヨォ。

まや
そっか、ありがとうございました。

去る木村。

ガーベラを持ってアイルのお参りに行こうとする花音に会う。


まや
すいません。善一朗という名前のおじいちゃん知りませんか?

花音
え?知らないですけど・・・あれ?まやちゃん?

まや
え?

花音
ピン子先生の所のお孫さんでしょ?お花の。

まや
はい、そうですけど。

花音
覚えてないかぁ、まだちっちゃかったもんね。私、小学校から高校まで10年くらいお世話になっていたのよ。あ、私、名前も先生につけてもらったの。先生、元気にしてる?

まや
あの、その、おばあちゃん、今朝、調子悪くしちゃって。

花音
え?

まや
それで、善一朗を捜してて。

花音
だれ?どうしたの?落ち着いて。

まや
おばあちゃんの大好きな人を捜したいんです。おばあちゃんが、死んじゃう前に。

花音
そんな、まだ先生、大丈夫なんでしょ?

まや
わかんない、わかんないから。

花音
そか、私も手伝うよ。先生の様子みたいから、病院教えてくれる?

まや
はい。

花音、ピン子のいる病院を聞き、病院へと向かう。

まや、去る。

男、人に聞いて回る。

木村に出会う。



すいません、ちょっといいですか?

木村
え?セールスならお断りだヨォ。


違います。善一朗じいさんを捜しているんですけど。

木村
え?さっきも女の子に聞かれただヨォ。


あ、そうなんだ。じゃあ、この詩を書く青年を知りませんか?ウクレレを持ってたんですけど。

空の詩を見せる。

木村
これ、ソラくんのだヨォ。このサイン間違いないだヨォ。


ソラ?クウじゃないんですか?

木村
クウっていうペンネームにしたのかヨォ?ナカナカしゃれてるだヨォ。


この子に会いたいんですが。

木村
オレはちょっと会わす顔がないだヨォ。


家の場所だけでも教えてもらったら結構です。さっき会ったばっかりで、まだ帰る途中だと思うんです。

木村
えと、そう遠くないだヨォ。この道をそのまままっすぐ行って、エフマートっていうコンビニの角を曲がるンだヨォ。


この子の名前は?

木村
えっと、河合空だよぉ。


ありがとうございます。

男、去る。

ちょっと上機嫌な空が現れる。

男が現れる。

空を見つけ話しかける。



君。


あ、もう、気分はいいんですか?あ、ひょっとして、やっぱりお金返せとか。


そんな事じゃない。君、善一朗じいさんを知らないかい?


知ってますけど。


え?


じいちゃんがどうかしたんですか?


本当に?君は、


孫ですけど。


そのウクレレは、


じいちゃんからもらいました。

電話をかける男。


みみ、みつけたよ。善一朗じいさんの孫だ。すぐに連れて行く。君、来てくれ。事情は後で話すから。


え?

2人、その場を去る。

空の回想。
ウクレレを持った善一朗が現れる。


善一朗
ソラ、どこにおるんだ?おーいソラ!


も〜なに?どうしたの?

善一朗
お前にコレをやる。それからな、歌を覚えるんだ。


何?どうしたの突然?っていうか、どうしてウクレレなの?歌って、ハワイアンとか?そんなの無理だよ。

善一朗
違う違う。じいちゃんが、芸達者コンテストでトロフィーもらったの知ってるだろ。その歌を覚えるんだ。


マイウェイ?

善一朗
そうだ。マイウェイだ。それを届けるんだよ、この手紙と一緒にな。


え?誰に?

善一朗
誰でもいいだろ。


良くないよ。届けられないじゃん。

善一朗
いいんだ。時間が来れば、時期にわかるから。


どういう事?

善一朗
これはな、わしの問題なんだ。お前にはわからないくていい。ただ届けるだけでいいんだ。


えぇ〜、わからなくていいって言われても。

善一朗
これをやる。(と1万円札を渡す)


え?

善一朗
やってくれるか。じいちゃんのお願いだ。


別に・・・お金貰わなくてもやるよ。

善一朗
欲しいだろ?


欲しい。

善一朗
よし、とっとけ。正直なのが、一番だ。


ありがと。でもどうしてじいちゃんが渡さないの?

善一朗
じいちゃんからは渡せん。


どうして?

善一朗
わしからはな、顔を合わせられんのだ。わしはピン子の許しをもらっていないからな。


ピン子?その人への手紙なの?

善一朗
そうだ。ピン子は許してくれたら、使いをよこすだろうな。ピン子は自分では来ない。そういう人なんだ。


そうなんだ。

善一朗
使いが来たら、それは許しの時だ。わしが生きているうちに来たらその手紙はもういらん。でも生きているウチに来るかもわからん。だから、お前がウクレレを練習しろ。マイウェイを覚えるんだ。わしのマイウェイだ、マイ「マイウェイ」だ。いいな。ちゃんと練習して、その手紙と一緒に届けるんだぞ。


うん。でも、じいちゃんが歌ってあげた方が、ピン子さん喜ぶと思うよ。

善一朗
そう簡単にわしが死ぬと思うか?


思わないけど。

善一朗
お前は保険だ。今の世の中大事だろ。わしのマイウェイはいい歌だ。その時が来たら、一緒に歌ってくれるか?


うん、もちろん。

善一朗
こりゃ楽しみだ。死ぬに死ねんな、その時が来るまで。

善一朗去る。
----回想終了。

まやと男が現れる。


まや
あの、


ピン子さんの、お孫さんですか?

まや
え?


じいちゃんから聞いています。ピン子さんは、絶対に自分で来ないから、使いを出すだろうって。

まや
わかってたんですか?


変な話ですよね。じいちゃん、多分、ずっと、逢いたいと思っていて、ずっと近くにいたのに、逢わずにいただなんて。マイウェイ歌って、ピン子さんに届けようとしてたんです。

まや
そうなんですか?それで、善一朗さんは?


じいちゃんは、2年前に亡くなりました。

まや
え・・・2年前に・・・。

とまやのケータイに電話。

花音(声)
まやちゃん、善一朗さんみつかった?

まや
うん。でも、もう亡くなってた。

花音(声)
そっか・・・。

まや
うん。花音さん、どうしたの?

花音(声)
聞いて、今、おばあちゃんね、息をひきとったって。

まや
え?

花音(声)
すぐに来てね。私もココにいるから。

まや
うん・・・。


どうしたの?

まや
おばあちゃん、亡くなったって。


そうか・・・タクシーで病院へ行こう。ひろってあげるから。

まや
うん。


あの、コレを預かってます。ピン子さんへの手紙です。届けてあげてください。

まや
手紙?


はい。

まやだけにサス。

まや
善一郎は、こんな近くにいたんだ。こんな近くに・・・?近くに、ホントに、近い、近すぎるよ。おばあちゃん、それを知ってたの?

暗転。

まやと空の姿が浮かび上がる。

善一朗とピン子の手紙。



「前略、ピン子様。早いモノで月日はあっという間に過ぎ去り、僕もおじいちゃんになってしまいました。あなたは今、どうされているんでしょう?強いあなたの事です。たとえ病気や怪我をしても、気力で治し、元気でいると思います。」

まや
「Dear善一朗。いきなりこんなモノを書いてしまってごめんなさい。迷惑でしたら、このまま読み進めずに捨ててください。この手紙はその程度のシロモノです。年をとり、残りの時間が少なくなった今、今になって善一朗の事を思い出しています。」

この先、途中から、空とまやの背後に善一朗とピン子が立ち、入れ替わる。
「僕は、そうは長生きは出来るはずがないと思っていましたが、なぜかこうして、70を過ぎた今もまだ生きています。逆にピン子も良く知る僕の友人達はほとんどが亡くなり、今も元気なのは悪友の正浩氏ぐらいです。」

まや
「別にあなたが一番だなんて思っていません。私はあの後2度結婚しましたが、2人とも、善一朗よりも素敵で、頼りになる男でした。」


「あの時の借金のおかげで、家族も親兄弟も失った僕ですが、ピン子と別れてから、10年ほど後に結婚をしました。子が出来、孫もおります。妻も健在です。」

まや
「ただ、今こうして、先が短くなり、これまでの事を考えたときに、善一朗の事を思い出しました。それで、今はどうしているのだろうと、気になり、ペンを取りました。」


「こうやって今更、言う事は不謹慎かとは思いますが、本当の事を伝えたい人に伝えたいと思います。」

2人
「この手紙を読んでいると言う事は、僕(私)はもう先に往っているのでしょう。今一度、この期に及んでですが、ひと言言わせてください。僕(私)は、今でも、あなたの事が大好きです。死ぬ前にもう一度、あなたにそれが言いたかった。もう一度あなたの顔が見たかった。もう一度、あなたに逢いたかった。ただただ、それだけを、伝えたかったのです。」


「草々 善一朗」

まや
「From ピン子」

見つめ合うピン子と善一朗、2人共に去っていく。

まや
おばあちゃんはやっぱり死期を悟っていたのか、善一朗に向けての手紙を書いていた。私たちには、何も書いてくれなかったのに。2人は、また出会うこともなく、お互いがどうしているかも知らずに死んでしまった。どうして、そうなってしまったんだろう。私には、よくわからない。
そもそも私は、まだそんなに、人を好きになる気持ちがわからない。そりゃそれなりに、好きな人はいるけど、でも、それほどじゃない。死んでしまう前に、また逢いたいと思える人はいない。私にも、そんな人が出来るんだろうか。出来たら、私はおばあちゃんみたいにはなりたくないと思う。やっぱり、そういう人とは、一緒にいたいと思うから。でも、おばあちゃんが出来なかった様に、それって結構難しい事なんだろうなぁって今は思う。

----暗転。




【私にも好きな人が出来るんだろうか?】




【好きと言う事を知る事が】



【私の恋の始まりなんだと思う】





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