No.011
[始マリノ終ワリ]


Episode03
Love

まやは恋に恋する17才。





【Episode03】




【まや】




【恋ノ始マリ】




ケータイで音楽を聴きながらメールをうっているまや。

まや
おばあちゃんは今日も「善一朗の話」をした。「善一朗の話」はいつも同じ言葉から始まる。「善一朗はダメな男。どうしようもなくダメな、ダメすぎる男だった。何がダメだって、それは、ほんとはダメじゃないからだ。人が良すぎるっていうのか、そう、いつも笑って人のいうこと素直に聞いてしまうんだよ。だから、ダメなんだ。悪いところがない人間は、悪い人間に騙されてしまうから。善一朗は、そういう人間だったんだ。」と。 そして、おばあちゃんはこう続けた。

まやのおばあちゃん(ピン子)がいつの間にか現れ、話しかける。

その後もおばあちゃんは、花を生けながら話を続けている。


ピン子
善一朗はね、私が一番初めに大好きになって、一番初めに結婚をして、それで、今でもやっぱり一番好きな男なんだよ。

まや
と。おばあちゃんは恋多き女だった。若い頃はモテモテだったらしい。いろんな男の人とつき合って、善一朗と初めに結婚した。そして離婚した。

ピン子
しょうがなかったんだよ。善一朗はダメな男だったんだから・・・。

まや
おばあちゃんは、いつもそれ以上多くは語ろうとはしなかった。善一朗は私のおじいちゃんではない。おばあちゃんはこれまでに3度結婚をしている。善一朗と別れた後の2度目の結婚で、私のパパを産んだ。でも、2度目の結婚した旦那さん、つまり私のおじいちゃんとは20年前に離婚して、その後すぐにまた、3度目の結婚をした。でも、3度目の旦那さんは15年前に脳溢血で亡くなってしまった。私はまだ小さかったので、その人の事は覚えていない。

ピン子
まやちゃん、私はこのまま、大好きな人の最期も知らずに死んでしまうのかねぇ。

まや
と言うのが最近の口癖だった。おばあちゃんは自分の死期をわかっているみたいだ。とは 言っても、何度もガンで入院をし、その手術の度に復活してきたその生命力はすごい。しかし、とうとう手術が出来ない所にガンが出来て、余命2ヶ月と言われてしまった。とは言ってもその2ヶ月からはとうに過ぎ、その予定の期日(?)からは1ヶ月半が過ぎている。

ピン子
善一朗はもう死んでしまったのかねぇ。それくらいは知りたいもんだよ。

まや
なんでおばあちゃんはそんな大好きな人と別れちゃったの?大好きなら、どんなに大変だって、一緒にいればよかったじゃん。

ピン子
そうだよねぇ。まやちゃんの言うとおりだよねぇ。でもおばあちゃん達はモノがよく分かっていなかったんだよ。こんなに心残りになるだなんて。いや、善一朗はどうだか分からないけど、私は後悔しているよ。

まや
でも、善一朗に会ってどうするの?

ピン子
この年になって今更何をするって事もないよ。ただ知りたいんだよ。善一朗の事をさ。ねぇ、まやちゃん、捜してもらえないかい?

まや
とうとう言い出した。今日まで、捜して欲しいとは言わなかった。善一朗の思い出話のかけらを少しずつ話すだけだったのに。なぜか今日は、おばあちゃんは私に思い切って頼んでしまった。

ピン子
ダメかい?

まや
捜して、もう死んでたらどうするの?

ピン子
それならそれでいいじゃないか。私は何も知らずに死んでいくのが嫌なんだよ。

まや
へぇ。そういうモノかなぁ。でも、私、そういうの、向いてないよ。受験もあるし。

ピン子
あ、これ、前金だよ。(と言って1万円ほどを渡す)

まや
え?

ピン子
ドコにいるか分からないしね。必要な分はどれだけでもあげるよ。まやちゃんにもお礼はもっとあげるよ。

まや
この時から、私は善一朗を捜す事になった。

場所が変わる。

まや
捜すと言ってもまず、何から始めればいいんだろう?とりあえず、おばあちゃんの知っている、何十年も前の善一朗の住所を手にした。今はどうなっているかわからない。私は善一朗がいたという、何十年も前の住所に行ってみた。

車が通りすぎる音。

まや
そこには何もなかった。というか、家なんて無くて、大きな道路が出来ていた。302号という大きな道だった。いきなり私は手がかりが無くなった。ご近所さんがいなくては、聞く事も出来ない。んー困った。どうしよう・・・。

と、そこへガーベラを持った男が現れる。


どうしたの?こんな大きな道路の前でキョロキョロしちゃって。

まや
え?あの。


失恋?

まや
違います。


ふられたショックで、ここに飛び込もうとか

まや
考えてません。


そう、なら良かった。でも事故が多いから、気を付けて下さいね。(花をたむける)

まや
はい。・・・・ココで、事故があったんですか?


・・・でも何だか困ってたみたいだったけど、どうかしたの?迷子?

まや
違います。いくつだと思ってるんですか?人捜ししてたんです。


あ、お母さん?

まや
違います。


じゃあお父さん?

まや
だから迷子じゃないですって。


そっか、そうなんだ・・・なんだ・・・。

まや
何でがっかりするんですか?


ちょっと、人助けとか、してみたかったので。

まや
人助け?


えぇ、私、先日リストラくらいましてね。何だか世の中に役に立たない人間だとか言われてしまったみたいで。もう、どうしていいんだかわからなくて。せめて誰かの役に立てないかと・・・

まや
あの、もういいですか。大人の愚痴に付き合ってる暇はないんで。


・・・何か私に、出来ることはありませんか?

まや
あ、じゃあ、善一郎を探してもらえますか?


善一郎??

まや
おばあちゃんがはじめに結婚した人なんです。

まやだけにライト。

まや
そもそも、おばあちゃんが善一朗の事をどれくらい思っているのかわからない。好きな人の事を思い続けるのっていうのはかなり純愛だ。多分。でもおばあちゃんはその後も結婚をしてる。おじいちゃんと。え?おじいちゃんは?好きじゃなかったの?あ、もう死んじゃったから??昔の好きな人の事を思い出すの?何だかおばあちゃんの気持ちがよくわからない。おばあちゃんの好きな、気持ちが、私にはよくわからない。

全体にライト。


名前と何十年も前の住所だけで捜すのはちょっと難しいんじゃないかな。

まや
まぁ確かに、何十年も前なら、ドコにいたっておかしくないけど。


もう少し、おばあちゃんに聞いてみてはどうですか?

まや
うん。そうしてみる。ねぇ、おじさん暇だよね?無職だし。


え?

まや
明日、公園に来てもらえる?


公園って?

まや
駅の向こうの。


あぁ、でもどうして?

まや
じゃあお願い。捜すの手伝って!


え・・・手伝うの・・・私も人の、役に立てますかね。わかったよ。じゃあ明日ね。

まや
明日7時に公園で。


じゃあ、おばあちゃんにしっかり聞いといてね。

まや
うん。

その場を去る男。

まやの家。
ピン子が現れる。


ピン子
まやちゃん、どうだい?善一朗の事、少しは何かわかったかい?

まや
ねぇ、おばあちゃん。善一朗のこと、何かわからないの?教えてもらった住所には道路しかなかったし、第一、善一郎ってドコにいるかもわかんないんだよね?私だけじゃ無理だよ。

ピン子
だいぶ具合が悪いんだよ。まやちゃん、お願いね。

まや
どしたの?おばあちゃんらしくないよ、弱気じゃん。

ピン子
私だって弱気になるときもあるよ。善一郎はそう遠くにはいけやしないよ。

まや
どうして?

ピン子
方向オンチの地理オンチだからだよ。私と結婚するまで、名古屋を出たことすらなかったんだから。

まや
だからって。名古屋にいるとは限らないよ。ねぇ、私には難しすぎるよ。探偵とか、頼んでみようよ。

ピン子
善一郎はね、歌が好きだったんだよ。

まや
それだけじゃわかんないよ。

ピン子
詩を書いて、歌ったりするんだよ。善一郎のマイウェイはとってもいい歌だったよ。

まや
マイウェイって英語の?

ピン子
いいや、善一郎が自分でね、詩をつけた歌なんだよ。曲はおんなじなんだけどね。

まや
それだけじゃわかんないよ。ねぇ、おばあちゃん。

ピン子
とってもいい曲なんだよ。

まや
どんな曲なの?

ピン子
マイウェイだよ、そのまんまだよ。「私の道」っていう感じの歌だよ。

まや
私、聞いた事ないもん。

ピン子
ちょっと、具合が悪いからおばあちゃんは少し寝るよ。まやちゃん、よろしくね。

まや
おばあちゃん・・・。

まやだけにサス。

まや
翌朝、おばあちゃんは救急車で運ばれた。危篤の状態だった。何とか一命はとりとめたもののこのまま目を覚まさないかも知れない。私は、何としてでも、善一朗を捜したいと思った。時間がない。おばあちゃんとの約束を果たさなくちゃ。私は、おばあちゃんの容体が少し落ち着いてから、約束をした公園へと急いだ。

場面が変わって公園。
男が戻ってくる。


まや
あの、こんばんは。すいません、遅くなっちゃって。


あ、やっと来たんだ良かった。

まや
酔っぱらってるんですか?


あ、あぁ、少しね。今日はちょっとツライ日なんだよ。

まや
そうなんだ。おじさんも、大変なんだね。


いや、それほどの事でもないよ。

まや
なんで?仕事ないんでしょ?


あぁ、今日は今日でちゃんと職探ししてたよ。

まや
やっぱり大変だね、大人って。


あぁ、結構、大変なんだよ、大人って。

まや
ねぇ、善一朗の事なんだけど。


あぁ思い出したよ。

まや
え?


思い出したよ。善一朗じいさんの事なんだろ。マイウェイの。

まや
知ってたの?


有名だったよ、町内の芸達者コンテストで、自分が詩をつけたマイウェイをウクレレ持って歌うんだ。私も一度だけ聞いたことあるよ。

まや
ホントに?その人、どこにいるの?


さぁどうだろう、わかんないなぁ。もう10年くらいまえだから。

まや
死んでる?


どうだろうねぇ、でも10年前なら、そのままこの辺りに家族がいるんじゃないかなぁ。また明日、日をあらためて、この辺りでイロイロ聞いてみたらどうかなぁ?有名なじいさんだったから、何かはわかると思うよ。

まや
明日?あんまり余裕がないんだけど。


どうして?

まや
おばあちゃん、今朝、調子悪くしちゃって。


そんなに?

まや
うん。


・・・・そうか、じゃあ今から捜そう。

まや
おじさん、ありがとう。


私も人の役に立てるといいんだけど。

まや
番号教えて。何かあったら連絡するから。


こんな、見ず知らずの無職の男を信用してもいいのかい?

まや
今はそんな事言ってられないから。

男、まやに紙を渡す。

まや
なにこれ?


私の履歴書だ。

まや
は?


その紙切れ一枚が私の今までの全てだ、そこに番号も書いてある。信用して欲しい。一緒に捜そう。

まや
ありがと。私からは後ですぐにワン切りしとく。


わかった。ついでに、その履歴書、ドコがダメか教えてくれよ。今日で12件門前払いなんだ。

まや
それは後でね。


もちろん。では後で。

音楽。

男、足下にあった、空の詩を手に取り、探しに行く。

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