No.011
[始マリノ終ワリ]


Episode02
Flower

花音の『平穏無事こそ我が人生』。


暗闇に響く何かの声。

花音(声)
・・・・ただいまー。

ダニ(声)
おかえりー・・・。

花音(声)
え?えぇっ!?だ、誰かいるの??

電気が付く。
床に寝そべっている何か(っていうか、ダニ)。


花音
なんだコレ、え?えぇ!?なに?なんなの?これがドコの平穏無事な人生なのよ!

ダニ
帰ってそうそうどうかしたんですか?

花音
はぁ?どうかしたかってなんであんたに聞かれるのよ!

ダニ
ちょっとぉ、落ち着いて下さいよ。

花音
えっとー・・・じゃあ、何?キミは何なの??

ダニ
・・・花の精です。

花音
だってぇ、えー、こんなの嫌だぁ〜、花の精?うそぉー。

ダニ
何でソコまで否定を、

花音
え?言っていいの?

ダニ
どうぞ。

花音
気にしない?

ダニ
結構大人なんで。

花音
んとね、キモイじゃん、だって。

ダニ
え?

花音
何か、キモイじゃん。その、カッコ?姿カタチ?

ダニ
・・・えぇ、キモイですよ。でも、ココに書いてあるでしょ。「花の精」って。

花音
うん、わかってる。その花ガーベラでしょ。

ダニ
えぇ、あなたのトレードマークですよ。

花音
良く知ってるのね。でもさ、嘘でしょ?花の精って言うのは。

ダニ
「ダニエル」って言います。(と名札をめくると、「ダニエル」と書いてある)

花音
人の話聞いてる?

ダニ
ダニ、エルです。(一時、名札の「エル」の部分を隠す)

花音
ダニ、エル?ダニ!?

ダニ
いえ、ダニエルです。

花音
絶対ダニだっ!あんたダニでしょ!?

ダニ
はい。

花音
認めた・・・。

ダニ
私達はあなたのカラダにかれこれ20年以上世代交代を繰り返し、生活してきました。この度、その20年以上の時間にヨリ進化を遂げまして、こうして人間ほどの大きさに。

花音
えぇ!?ダニがこんなに??

ダニ
はい。ダニエルです。ダニ、Lです。

花音
え?それ、Lサイズのダニって事なの?

ダニ
ダニ、エルです。

花音
うわぁ、うまいこと言っちゃってる。でも、何で私のカラダに住んでるの?

ダニ
ちゃんと浴びなかったでしょ?シャワー。

花音
え?

ダニ
ちゃんと入らなかったでしょ?消毒槽。

花音
うん。

ダニ
おかげで私たちの祖先は生き延びられたのです。

花音
うそぉ!私、そんなに汚くないもん。ちゃんと毎日お風呂入って洗ってるもん。ダニなんているわけないもん!!

ダニ
あなたのダニを甘く見ないで下さい。

花音
あなたの、って言わないで。

ダニ
私たちは進化したのです。そして、私は、あなたと共に、生きているのです。

花音
えーダニと共にって、そんなのいやーだぁー。

ダニ
私たちだってがんばってしがみついて生きてきたんです。花音さんに迷惑かけないように、なるべくやたらと増えないようにバースコントロールしてきたんですよ。

花音
へー。

ダニ
なんですか、その関心なさそうな態度。いいんですか?思いっきり増えてもいいんですか?かゆくて普通に歩けなくなりますよ。

花音
え?やだそんなの。

ダニ
でしょ、だから、仲良くしましょうよ。私たちはほんの少しだけ栄養が貰えたら、それで、いいんですから。

花音
やっぱり、私の血ィ吸うんだ。

ダニ
ダニですから。

花音
でもさ、ちょっと待って。そんなの私に何の得もないじゃない。かゆいだけでさ。

ダニ
そんな事ないですよ。私たちは、あなたを守ってますから。

花音
守るったって。ダニに何が出来るのよ。

ダニ
出来ますよ。私たちはあなたと誰よりも長く一緒に居るんですよ。肌身離れず。

花音
そう言う言い方はやめて。気持ち悪いから。

ダニ
これからあなたが多くのモノを失ったって、私たちは側にいます。そして、あなたを守ります。あなたの平穏無事な生活を守ります。

花音
本当に?

ダニ
えぇ、ずっと守っていたんですよ。あなたの秘密も。

花音
え?

と、部屋の奥から声が聞こえる。

ダニB声
花音さーんご飯出来ましたよー。ご飯にしましょー。

花音
え?

ダニ
花音さん、ご飯ですって。

花音
まだいるの?

ダニ
えぇ、もちろん。さて、私たちもご飯にします。

花音
え?あなた達のご飯って。

ダニ
いただきまーす。

花音
いやぁー血ィ吸わないでー・・・。

----暗転。

と、花音の姿が浮かび上がる。

花音
あれ?家だ。・・・・え?今の、何?夢??なな、なんなの、一体。私、おかしくなっちゃったの?

ダニ(声)
そんな事ないですよ。

花音
え?

ダニ(声)
頂いてます!

花音
うわっ!かゆっ!!

ダニB声もうおなかいっぱいーい・・・。

花音
こら、吸いすぎないでよ。

ダニB声
ごちそうさまでしたー。

花音
あーもう、かゆい!ん?あ、そうだったんだ。私、気づいてなかったんだ。普段から、結構あちこちかゆくて掻いてた気がする。乾燥肌だけじゃなかったんだ。そっか私、気づいてなかったんだ。

あちこち掻きながら、ふと、何かを思う。

花音
私、ダニと一緒に生きていくのか。出来たら人間がいいなぁ。そのうち、彼氏出来るかなぁ?でも仕事朝早すぎるんだよな。でもずっと1人は嫌だなぁ・・・。ダニに言われてもなぁ。これから、多くのモノを失ったって、側にいるから・・・なんて。

そして気づく。

花音
あ、私は、気づかないフリをしていたんだ。今まで、いろんなものを失くしてきたこと。生きてきて、いろんなものをなくしてきた事を。生きていくってことは、何かを失うという時を過ごすことなのかな。知らないうちに、職場の前の景色が変わっていた。仕事を一生懸命やって、彼が出来なくなっていた。そして、友達が死んでしまった。・・・もっと、他にも、イロイロ変わってる。時の流れと共に、常に何かが終わり、今がある。つまり、時間には、終わりがあると言う事だ。私は今、それを知った。

----暗転。




【それでも私は平穏に生きる】





【一生懸命平穏に】





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