No.林
[ e-てんき ]


Episode06
緑の塔







【Epsode06:緑の塔】




【ハヤシティの惨劇】





夜-------閉ざされた部屋

ほどよく明るい月明かりが部屋の中を映し出す
マコトが一人、水のような物をまいている
そこへ、もう一つのドアより所長が現れる


マコト
------所長。準備、出来ました。

所長
これだけあれば十分だろう。さ、マコト君。君はもういい、早く出ていきなさい。

マコト
え?そんな 所長一人、置いて行けません・・・。

所長
いいんだ。私は責任者としてここに残る。どうせ私は助かった所で、責任追及を逃れられない。命があっても、職を失う。

マコト
そんな、所長の責任なんかじゃありません。

所長
いいんだ。生きて罪を背負うよりも、ココで責任ある死を全うすることで、私は罪をつぐなおうと思う。なにより私がココで死ねば、家族にも、補償も出るだろう。

マコト
家族・・・・

所長
そうだ。君にも家族がある。マコト君は、兄弟みんながオカマの仲良し家族なんだろ。

マコト
オサム兄ちゃんはヤクザの組長を継ぎましたが、構成員に刺され、下克上されて死んでしまいました。

所長
え?

マコト
カスミ兄ちゃんはミュージシャンになるって言って東京に行ったまま、消息がわかりません。僕は、ひとりぼっちなんです。所長みたいに素敵な家族はいません。僕がココに残ります!

所長
ダメだ、君はまだ若い。これから君は、研究者達に訴えていって欲しい。この、『緑の塔』の惨劇を知るものとして、

マコト
-----食糧植物バイオ研究所、でしたよね。『緑の塔』の正式名称って。

所長
そうだ。しかし我々の研究はバイオの力をかりて食糧植物を、あんな化け物に変えてしまった。

頭上でざわざわという音が聞こえる。

マコト
所長、アレはいったい何なんですか?

所長
------彼らは、君が担当する684階から生まれたようだ。

マコト
684階?む・・・や・・・し・・・?

所長
そうだ。

マコト
まさか、もやしですか?

所長
あぁ、成長の早さを変える研究をしていたんだが、どうも動物のように動いて見える程まで、そのスピードは早まってしまったらしい。

マコト
そんな・・・あんなヒョロヒョロした物が、どうしてこんな化け物になるんですか!?

所長
あれは日陰で育てるからあんなにヒョロヒョロしているんだ。ちゃんと日光にあたれば、青々とした葉を茂らせる事も出来る。

マコト
でも、日光にふれるはずなんてありません。684階は完全暗室になっているはずです。

所長
種子を飛ばしたのかも知れない。誰かの服にでもついて他の部屋で触れたのだろう。しかし、まさか、人間の血を根から吸いつくすようになるとは・・・・

マコト
血を吸いつくす!?

所長
そうだ。みんな奴にやられた。

マコト
13人も、ですか!?

壁を叩く音が聞こえる

所長
もう、そこまで来始めているようだな。

マコト
------何だか、嬉しそうですね。

所長
マコトくん、どういう意味だね?

マコト
彼らは今、この『緑の塔』を自分の物にしたんです。暗く、狭い部屋から出て、目一杯遊び回って、何だかそれがうれしくてしょうがないみたいです。

所長
そうだな。君のいう通りかもしれない。彼らは人間の都合で作られた、食糧植物だ。植物だというのに、日光もロクに与えられず、作られたもやし。栄養を封じこめ、とってもヘルシーなもやし。安く、庶民の食べ物として広がっていったもやし。それらは全て、彼らが望んでいた事ではないだろうからな。

マコト
もやしって、大切な、食糧植物なんですね。

所長
そうだ、だからこそ、彼らは暴れ出したのかもしれん。我々が、もやしへの感謝を忘れてしまっていたために・・・・。

マコト
これから僕は、もやしのありがたみを伝えて行きたいと思います。

所長
・・・・それよりも、彼らが生まれた原因解明をしてくれたまえ。

マコト
そうですね、それが先ですね。

壁から、もやしの根が飛び足してくる。

所長
のんびり話をしている場合ではなかったな。私は、エレベーターで上がれるだけ上がって火を付ける。マコトくんは、ココで火をつけ、すぐに出ていけばいい。上から下から、火をあぶせ、サンドイッチ作戦であいつらを退治する。

マコト
所長--------

所長
マコトくん、これだけは覚えて起きなさい。失敗には許される物と許されない物があると言う事を。

マコト
所長、すみません。すみません、僕が、僕が------。

所長
もう、何も言わなくていい。こうなってしまったら、これは私の責任になる。それでいいんだ。じゃあ、後を、頼んだぞ。絶対にここから、やつらを出すんじゃないぞ。

バケツとマッチを持って出ていく所長。

マコト
所長・・・、所長・・・こんなハズじゃなかったんだ。僕だって、こんなもやしっ子の僕だって、立派な成果を出せる事を見せたかったんだ。所長に褒めて欲しかったんだ。所長だけは、僕の能力を認めてくれてた。所長だけは、僕がオカマだって事を認めてくれた。だから、僕が成果を出して、所長に喜んで欲しかったんだ、それなのに、それなのに------。おいもやし!なんて事をしてくれたんだよぉ!!僕らはもやしっ子同士仲良くやれてたんじゃなかったのかよぉ?勝手に部屋から逃げ出して、勝手にこんな事を・・・・。

マッチを構えるマコト。
と、マコトの腹部からもやしの根が飛び出す。


マコト
そんな・・・どうして?僕までも・・・??君たちは、そんなに人間が憎いのか?僕たちは仲良く------そうか、僕ら人間達が、もやしを利用してるのと同じように、君らは僕を利用したって言うのか?そうか、そうなんだね。じゃあおあいこだ。でも、君たちもコレでもう、終わりだよ。

マッチに火を付け足下に投げる。
倒れるマコト。
メラメラと燃えさかる炎。

背後には「もやしの精」のシルエット。

-----暗転。


END


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