No.林
[ e-てんき ]


Episode05
ほくろの歌







【Epsode05:ほくろの歌】




【男達の讃歌】





ハヤシティのとある小さな公園。

中年の男(鐘印不二雄)がやや上を見て、キョロキョロしている。
そこへルンルンな木村がやってくる。


木村
ハローハロー、ハローワーク〜♪

鐘印
あ、ちょっと。

木村
ん?この歌うたいたいだよ?僕が作ったハローワークの歌だよ。

鐘印
いや、そうじゃなくて。

木村
でもこの歌、混声2部合唱だよぉ。おじさん、合唱団の人だよ?

鐘印
いや、違うんだけど。ねぇ、あの枝は俺の背より高い位置にあるよね。

木村
そうですね。あんなところで歌うだよ?おじさん見かけによらず結構身軽だよぉ。

鐘印
よし、アレにしよう。あの、これなんだけど。(と、ベルトを取り出す)

木村
え、え〜!?ちょっと、公園でなにするんだよぉ。

鐘印
コレをアソコに引っ掛けて欲しいんだ。

木村
アソコに!?

鐘印
あの枝にだよ。

木村
え、え〜無理だよぉ。僕も届かないよぉ。ほら、ほらっ。(届かない事をやってみせる)

鐘印
そうかぁ・・・。あ、じゃあ、俺がこうするから、ここ引っ張ってみてくれないかな。おもいっきりさぁ。

木村
なんだそんなことだよぉ、それならレンジのチンだけが得意のコンビニアルバイトを10年続けた僕にも出来るだよぉ。僕のチンは絶妙だよぉ。

鐘印
いいからいいから。思いっきり頼むよ。

木村
わかっただよぉ。(とすぐひっぱる)

鐘印
たんまたんまたんま。(とベルトをはずす)怖いなぁ今の若者は。こういうこと平気でするんだもんなぁ。おじさん予想外だよぉ。

木村
え?

鐘印
これ引っ張ったらどうなるかわかる?

木村
そんなの知らないだよぉ。引っ張れって言ったからやっただけだよぉ。後先考えてたら、ニートなんてやってられないよぉ。

鐘印
これ引っ張る、俺の首絞まる、俺息できない、俺チーン!

木村
えぇ〜、おじさん、僕そっちのチンは得意じゃないよぉ。まさか、ニートをこうやって全員刑務所に入れる気だよ?

鐘印
そんなの命いくつあっても足りないよぉ。そんな事じゃないんだって、ねぇ、俺の話聞いてくれる?

木村
いやだよ。

鐘印
なぁ、聞いてくれる?いや、聞いてくれるまで聞いてくれよ!なぁ。

木村
え、え、ちょっと近いよ。近いよ顔が。僕これからハローワークいくんだよぉ。

鐘印
聞いてくれなきゃおじさん、すごく嫌なことするよ。

木村
やなこと?

鐘印
(すごく不快なことやりかける)

木村
わかったよ。ちょっとだけだよ。

鐘印
村で唯一、名古屋と言う大都会で公務員になった俺を親戚一同が期待していた。俺はいい気になった。天狗なんてもんじゃねぇ。もう鼻なんてこんなんで、象だ、エレファントだ。毎日パオーンな俺だったんだ。エレファントでエレガントな生活が約束された公務員になろうとしていたんだ。
そして俺は区役所と言う戦場で、単調な現状を快調に全うした!やがて俺は職場の花をゲットした。4つ下の久美子ちゃんさ。誰もがオレをうらやんだ。毎日朝も昼も夜も頑張り、一子をもうけた。俺によく似て可愛い女の子さ。いや、可哀想な女の子さ。名前は不二雄と久美子から文字を取って、不二美と名づけた。不二美はその名の通りすくすく大きくなっていった。そして不二美は小学生に上がり、やがて俺にPTA副会長の白羽の矢がたった。そうさ、娘自慢の公務員のパパはPTA副会長になったのさ。正に順風満帆。幸せな人生を送っていたのさ。
だけど、回ってきた仕事はベルマークの集計さ。それでも俺は不二美の為にがんばったさ。1点、0.5点、おっ4点!やるなぁジャポニカ!
俺は、毎日毎日ベルを数え、己のマークをまっとうしたさ。2年間ベルをマークしたさ!だのに、PTA会長のばばあ、俺が集計中にベルマークで買ったDVDデッキで長崎莉奈のDVD観てたのバラスって。ホント、あれは出来心だったんだ。長崎莉奈が可愛くていとおしくて。りなっちが、りなっちが・・・俺のベルで私をマークしてって言っていたように思えたんだ!あのばばあ、俺を変態ってののしりやがって。りなっち観るのが何で変態なんだよ。パンツ1枚だったのは、暑かったからなんだ。
でも、このままじゃ俺はただの変態公務員パパとしてさらされる。美しい妻久美子、オレに似て可哀想な不二美、すまない。
だから俺はもう・・・。(とベルトを首にかける)

木村
-----それじゃ。ハローハロー♪

鐘印
待って!待てよ、りなっち!

木村
木村だよぉ。

鐘印
普通さ、ここ流さないのが人間じゃないのか?だから怖いよ、今の若者は。

木村
僕、ニートだしよ。そろそろ仕事さがさないとよぉ。

鐘印
おいおい、な、まず1から事実を追っていこう。いいか、俺ここで死ぬと、ここにこういう白いテープが引かれる、ここに誰も近づかなくなる、ここで遊んでいた子どもたちが家に引きこもる、子どもの体力が低下する、体育が嫌いになる、保健体育も嫌いになる、少子化がいっそう進む、人類の未来が失われる。なな、なんてことだ!!分かるか若者!この現実を受けと、あっ、待て行くなよ。お約束だけども。

木村
じゃあ、死ななきゃいいと思うよぉ。

鐘印
君は今までいったいどんな人生を送ってきたんだ?簡単に人の首を絞めたり、死のうとする人を「死ぬな」の一言で止めようとするなんて、まったく、君はなんて死に対して鈍感なんだ?え?裏を返せば、それは生に対しても鈍感なんじゃないのか。君はなんだ?なぜ生きるんだ?

木村
・・・・えと、なぜって・・・。

鐘印
このやろ!(木村の頭をこずく)頭で考えるな!感じ取れ!

木村
んん〜!!

鐘印
え!え!?怒ったの?何で怒るの?カルシウムとってる?

木村
取ってるよ。毎日牛乳をパックで7本は飲んでるよぉ。

鐘印
怖い!怖いなぁ。加減を知らない若者怖すぎる!

木村
んん〜!!わちゃ!わちゃ!(攻撃が超早い)

鐘印
まて、ちょっと、何だそれ!

木村
わちゃ!わちゃ!

鐘印
人の話聞いてるのか?おい、やめろそれ。

木村
んん〜。

鐘印
おい人語をちゃんとしゃべってくれ。

Episode05-2へ


※無断転載、無断複写を固く禁じます。上演許可申請の際はお問い合せよりメールを下さい。

上へ戻る
目次へ戻る
台本一覧へ戻る
TOPへ戻る

fuzzy m. Arts