No.009
[ 20 till I die ]


Scene08

[タケルとアキラと。]






【2004年3月27日土曜日】



アキラの回想。

アキラとタケル。


アキラ
僕がキョウコさんに出会ったのは、1995年の6月だった。僕は高校3年でタケルと同じ学校に通っていた。内気な僕は、高校に入って1度も彼女が出来た事がなかった。性格的に正反対のタケルには常にかわいい彼女がいて、それがちょっと羨ましかったけど、だからといって僕にはそんなに好きな人はいなくて、タケル曰く、

タケル
彼女は、好き嫌いじゃなくて見た目と雰囲気で決めるんだ。

アキラ
と言いうことだった。でも僕にはそれもよくわからなくて。そりゃ、多少好きな人はいたけど、だからどうってことを思った事がなかった。そんな僕に対して、毎年梅雨の終わりの時期になるとタケルは言った。

タケル
おい、教育実習生見に行こうぜ。

アキラ
タケルは見に行く、と言いながら、必ず自分のタイプの実習生と友達の様になることを目的としていた。同級生の女の子だってうまくしゃべれない僕には、ハイレベルな行為だった。ついていっても、僕はどうしていいかわからないのでいつも断った。「オレはいいよ」

タケル
勉強勉強。

アキラ
いったいなんの勉強なんだろうか?

タケル
今年は豊作らしいから。

アキラ
何をさしてそう言うのかわからないが。タケルは自分の得た情報に対し意欲的に行動しようとしていた。そうして僕はタケルに手を引かれ、職員室下にある実習生たちが待機をしている会議室へと向かった。

タケル
キター!高橋さんよすぎ。

アキラ
え?

タケル
あ、どうも、お疲れ様です!あ、僕、3年8組の哀川です。(袖にはける)

アキラ
・・・タケルは椙山大学の高橋先生のトコロに行き、「誰よりも先に名前を覚えてもらえれば勝ちなんだ。」という彼の持論を実践し、そして彼の思い通りに事が運ぼうとしていた。僕は廊下に置いて行かれ、何人かの「男の」実習生に話しかけられた。

実習生
やぁ、君は何処のクラスの子ですかね?

アキラ
元々、初対面という事自体苦手な僕は、愛想笑いをしてやりすごそうとした。「あ、どうも。」(愛想笑い)

実習生
返事になってないですぞ。私は歴史の教育実習で来た堀内野条です。どうも。

アキラ
ども。僕、3年2組の花村です。

実習生
理系ですねぇ、残念ながら私には会えないですぞ。

アキラ
別に構いませんけど。

実習生
うむ、今会ったご縁に、2組まで遊びに行きましょう。

アキラ
え?・・・な何しに?

実習生
ほっほっほっ、冷たいんですなぁ。そう言えば2組と言えば、キョウコさんのクラスではないですか。

アキラ
キョウコさん?

実習生
ほいさ。柏木キョウコさんですぞ。優しい人ですぞ。

アキラ
はぁ。

実習生
英語の担当ですぞ。花村君は英語は得意ですかな?

アキラ
いや、英語は、最悪です。

実習生
なら教えてもらうといいですな。あ、私も英語は得意ですから教えますぞ。

アキラ
あ、別に、いいです。自分で勉強します。

実習生
あ、キョウコさん。

アキラ
え?

実習生は視線をずらす。
姿はないが、キョウコさんと話をしている。


アキラ
それがキョウコさんとの出会いだった。特別美人といった感じじゃなかったけど、優しい感じの人だった。後に「まろ」と呼ばれた歴史の実習生と話している、彼女の笑顔を見たとき、それはどんな人にも好印象を与えるものだ、と思った。多くのオトコがこの微笑みに対して勘違いを生みそうな感じがする、そういう「お姉さん」だった。だがボクは、それに気づくことなく、彼女の笑顔に引き込まれていった。でも、だからって、それは一目惚れというのとは違った。とその時、まろが紹介してくれた。

実習生
この子がキョウコさんのクラスの子ですぞ。えーと、名前は

アキラ
花村です。花村アキラです!・・・ボクの緊張の具合が、キョウコさんを笑わせた。

と、タケルがやってくる。

タケル
おい、アキラ、そろそろ時間だぞ。

アキラ
え?まだ鐘が。

タケル
次体育だろ。

アキラ
あ、そうか。

実習生
私もいきますぞ。

タケルと実習生が去る。

アキラ
それからというもの、ボクは毎日タケルを誘い、キョウコさんに逢いに行った。ロクに話すことも出来ないのに毎日。あっという間の2週間だった。そしてその最後の日、キョウコさんはボクに約束した。卒業式の日にまたみんなに逢いに来ると。

ボクはそうして、恋に落ちた。

ボクはこれまでになく高校生活が楽しくなった。またキョウコさんに逢える。それだけが楽しみだった。ボクは勉強した。卒業式に進路が決まっていなくては、カッコ悪いと思ったから。今までになく、ものすごく、ボクなりに。勉強をしていれば、時間が早く過ぎていき、早くキョウコさんに逢えると思った。だからとても集中出来た。2月になり、ボクは大学に受かった。私立のそこそこだったけど、1年前のボクには考えられなかった。キョウコさんのおかげだった。少しでも、キョウコさんに近づきたくて、大学に入ろうとしたのだから。
でも彼女は、卒業式には現れなかった。まろが教えてくれた。ボクと同じ年の妹が受験に失敗してしまい、側にいたいので今日は来れないと。そしてまろは、ボクにキョウコさんの手紙をくれた。手紙には、ボクへの、祝いの言葉が綴られていた。みんなではなく、ボクに。それが嬉しかった。手紙の最後には、キョウコさんの家の住所が記されていた。ボクはすぐに返事を書いた。3ヶ月してから返事が来た。妹は何とか合格を決め、自分は就職して忙しくがんばっていると。ボクはまたすぐに返事を書いた。するとまた3ヶ月して返事が来た。今度は1度お茶でもどうですか?と書かれていた。
ボクは喜んだ。また逢えることを。大学生活は楽しかった。時々逢ってご飯を食べたりした。映画を一緒に観に行った。時々電話をした。毎日逢いたかった。毎日話をしたかった。ボクは、一定の距離を保ったまま20歳になっていった。

------暗転。

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