No.008
[ ダカラ僕ハ此処ニ居ル ]


Scene08



コマチが入ってくる。

コマチ
お兄ちゃん・・・。

ユーケイ、ふと我に返る。

コマチ
ごめんなさい。おどろかすつもりはなかったんだけど。

ユーケイ
いや、別にそんな・・・・えっと、コマチちゃんだったよね。

コマチ
はい。お兄ちゃんごめんなさい。昨日のお母さんはちょっと疲れてて・・・いろんなこと、言っちゃったけど、普段はあんなお母さんじゃないの。

ユーケイ
あぁ、・・・・わかってる。僕も母さんのことは少しだけど覚えてる。やさしい母さんだった。あ、でも「お兄ちゃん」っていうのはちょっと。

コマチ
え?あ、ごめんなさい。でも私、昔からお兄ちゃんの話は聞いてて・・・「お兄ちゃん」って呼んでみたかったの。・・・じゃあ、ユーケイさんでいい?

ユーケイ
うん、そうだね。

しばしの沈黙。

ユーケイ
母さんが、言ってた事は、本当なんだよね。

コマチ
え?

ユーケイ
母さんの、母さんの言った事は本当なんだろ。僕が母さんの子じゃないって。

コマチ
私は、何も聞いたことなかったから・・・。

ユーケイ
父さんは何も言ってくれないんだ。やっぱり本当みたいで。

コマチ
そうなんだ・・・。

少しの間。

ユーケイ
・・・・コマチちゃん、今は、高校生?

コマチ
一応。

ユーケイ
一応って?

コマチ
いろは教団のお金がなくなっちゃって、私の学費が持ってかれちゃったの。だから今は行ってないんだ。

ユーケイ
そうだったんだ。

コマチ
でもお父さんのおかげ来週からは何とかいけそう。ココからは少し遠いんだけど。

ユーケイ
そっか。

コマチ
うん。

ユーケイ
コマチちゃんは、高校卒業したら、そのあとはどうするの?

コマチ
お母さんは、大学行ってって言ってたけど、微妙〜。

ユーケイ
どうして?

コマチ
私、教団の活動好きだからずっと続けたかったんだ。

ユーケイ
いろは教団?

コマチ
うん。どんな人にも分け隔てなく救いの手を差し伸べるの。お母さんは治癒の能力を持ってて、人のケガや病気を治せるの。

ユーケイ
すごいね・・・コマチちゃんも何か出来るの?

コマチ
私は占い。

ユーケイ
占い?

コマチ
うん、トランプ占い。

ユーケイ
トランプ?!

コマチ
そう。一枚引いてもらうだけで、その人の行く末が占えるの。だから私は人生相談みたいなことをしてあげるんだ。

ユーケイ
すごいね・・・それも。

コマチ
ユーケイさんも占ってみる?すっごく当たるんだから。

ユーケイ
へぇ、・・・・お願いしてみようかな。

コマチ
ユーケイさんは、将来どうしたいの?

ユーケイ
そうだなぁ・・・まずは、大学を卒業して、その後は・・・出来たら今やっているようなことを続けたいかな。

コマチ
今やってるようなこと?

ユーケイ
僕はね、地質学を専攻しているんだ。

コマチ
地質学?

ユーケイ
あぁ、地球の歴史みたいなのを研究しているんだ。

コマチ
なんだか難しそう・・・。

ユーケイ
僕は昔から、モノゴトの始まりとかにすっごく興味があってね、子どもの頃は考古学者になりたいと思ってた。まぁ今やってることもあんまり変わんないけど。

コマチ
お兄ちゃんは頭がいいのね。じゃあコレ、一枚取ってみて。

ユーケイ
一枚とるだけ?

コマチ
うん。

ユーケイ
すごいね。じゃあ、コレ。

コマチ
いろはにほへっと・・・・!

ユーケイ
どうしたの?

コマチ
-------なんだか、疲れてるみたい。

ユーケイ
見えないの?

コマチ
うん、ごめんなさい。

ユーケイ
昨日ウチに来たばっかりだからね。また今度頼むよ。

コマチ
うん、じゃあ今度ね。

ユーケイ
ねぇコマチちゃんは、未来じゃなくて、過去はみえるの?

コマチ
過去?

ユーケイ
そう、過去。

コマチ
んー過去はわかんないなぁ。

ユーケイ
そっか。コマチちゃん、昔の自分の事を考えたことある?

コマチ
どういうこと?

ユーケイ
僕は、もうすぐ20になるだろ。だから、もう20年も生きてきたんだけど、その20年間の歴史みたいなのを、ずっとたどってみるんだ。

コマチ
うん。それで?

ユーケイ
そうするとさ、やっぱり途中から覚えてないよね。

コマチ
それはそうだけど、それがどうしたの?

ユーケイ
それって、どうしてだと思う?

コマチ
どうしてって、忘れちゃうんでしょ。

ユーケイ
忘れる?どうして?どうして忘れるの?

コマチ
それは、昔の事だから。

ユーケイ
でも、全然覚えていないなんておかしいだろ。自分が生まれる瞬間や、生まれてからの出来事なんて、かなりのインパクトがあると思うんだ。

コマチ
そうね。

ユーケイ
なのに、全然覚えていないなんておかしいだろ。僕は忘れるって言うのとは違うと思うんだ。

コマチ
じゃあ、どうしてなの?

ユーケイ
いや、それはわからないんだけど・・・・。

コマチ
ユーケイさんって難しいことを言うのね。

ユーケイ
はは、そうかな。・・・・それからさ、自分のルーツみたいなものを考えるんだ。今の自分ってどうしてあるんだろうって。

コマチ
やっぱり難しいわ。

ユーケイ
そう、難しいよね。考えていくとキリが無いんだ。だから僕は、その終結を、父さんと母さんにしていた。

コマチ
え?

ユーケイ
でも、僕はそれを失ってしまった。自分のルーツが・・・・わからない。僕は、一体・・・何なんだ?

コマチ
お兄ちゃん・・・。

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