No.008
[ ダカラ僕ハ此処ニ居ル ]


Scene01






【1994年11月19日】




【シン】




学生服を着たシンが本(村上春樹著「風の歌を聴け」)を読んでいる。

窓を叩く音が聞こえる。

窓を開けるシン。そこにはそらの姿。


そら
・・・なに?本読んでんの?

シン
うん。

そら
オトコのくせに、くれぇんだよぉ、おめー。

シン
今に始まったことじゃないし。

そら
ずっとネクラだからな。マンガばっか描いてるし。あ、続きは?

シン
見たいんじゃん。

そら
いいから見せろよ。

シン
・・・・はい。(机の上から取り出す)

A4サイズの封筒を手にして部屋に入るそら。

シン
勝手に入らないでよ。

そら
おじゃましまーす。

シン
・・・・。

そら
いつ出来てたんだよ。

シン
え?それは、昨日までの分かな。

そら
なんでもっと早く言わねぇんだよ。

シン
最近来なかったからさ。

そら
あ、そー、・・・寂しかった?

シン
別にそんなこと無いけど。

そら
素直じゃねぇなぁ。

シン
は?

そら
そうそう、オレちょっと先輩やっちゃって足折ってたんだよねぇ。

シン
え?

そら
あ、まぁ、足というか、足の指?かな。

シン
なにやってんの?

そら
タイマン。

シン
好きだね、そういうの。

そら
やっぱ売られたケンカは買わなきゃダメっしょ。

シン
ふーん。

そら
今度のはおもしろいんだぜ。レンガを足の上に落とすの。

シン
レンガ?

そら
そう、レンガ。順番にさ、お互いの足の上に落とすんだよ。少しずつ高さを上げてってさ。で、リタイアしたらマケなわけ。おいネタにしろよ。オトコとオトコの名勝負みたいなのでよ。タダでいいぞ。

シン
僕が描いてるのSFだよ。なんで宇宙人との勝負にわざわざレンガを足の上に落とし合うんだよ。

そら
っせーなぁ。いいから描けよ。いいか、オトコとオトコの勝負にレンガだぞ。

シン
はいはい。

そら
あ、そういえばそれ何?

シン
コレ?

そら
そう。

シン
「風の歌を聴け」。

そら
は?

シン
村上春樹。

そら
知らねー。マンガんなってる?

シン
なってない。

そら
お前なんでそんなの読んでんの?

シン
古本屋の安い文庫のコーナーで見つけたんだよ。

そら
いくら?

シン
50円。

そら
やすっ。そんなのおもしろいのかよ。

シン
まぁまぁ。

そら
なぁ、コレこんだけ?

シン
うん。

そら
・・・終わりちゃんと考えてんのかよ。

シン
うん。

そら
ならよぉ、もたもたしてねぇでもうちょっとちょっとさっさと話進めようぜ。

シン
ダメだよ。ちゃんと展開があるんだから。

そら
なぁ、じゃあ教えてくれよ。こいつ、最後どうなんの?かなりやべーじゃん。

シン
教えない。

そら
あっ、おめぇ、最後まで考えてないんだろ。

シン
そんなことないよ。

そら
じゃあどうなるんだよ。

シン
聞いたらつまんないだろ。

そら
いいから教えろよ。

母(声)
シン〜、上にいるのぉ〜?

母の声を聞いてすぐに去るそら。

シン
いるよー。今からおりてくー。

------暗転。

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