No.005
[ c・lover ]


Scene15
[ T's voice ]


西川家。

ミッフィーを目の前に置いて難しい顔をしている西川。


西川
・・・・ミッフィーさん。あの、あなたが、個人的に遠山さんとお話したんですか?それともその愛くるしいお姿で、タケルが話したんですか?・・・・いや、まぁ、今、即答されても困るんですけどね。いや、いいです、今は、しゃべらなくて。

ボーっと考える西川。

西川
ボクは・・・ずっと理解出来ないでいたんだ。タケルが死んだってコトを。半年も前に消えて無くなったってコト。わかったつもりでいたけど・・・やっぱり、受け入れてなかったんだ。遠山さんを見ていて、だんだんわかってきた。本当にいなくなったんだな、お前は・・・・・・。

タケル(声)
ごめんな。

西川
!?

チャイムの音。

西川
-------え?あ、

と、玄関を見に行くと、はながいる。

はな
こんばんは。こないだは、ゴメンね。

西川
いいよいいよ。おかげでちかと山盛先生と、たらふく食べさせていただきました。

はな
ちかちゃんは?

西川
まだ帰ってないよ。バイトじゃないかな。

はな
そっか。こないだはホントにゴメンね。

西川
あぁ気にしないで、お祝いならまた日を改めてやろうよ。

はな
あ、そのミッフィー。

西川
ん?あぁ、ちょっとね・・・・。

はな
ホントにしゃべった?

西川
やめてよ。そんなことあるわけないんだから。

はな
でも、最近私、タケルの声が聞こえるのよね。

西川
え?じょ、冗談きついよ。そんなのはさ、・・・・自分が作り出してる声なんだよ。幻聴幻聴!

はな
そうなのかな?西川くんは聞こえない?

西川
え?そ、そんなの、聞こえるわけないじゃん。

はな
なんか焦ってない?

西川
ないない。

はな
そう?

西川
それより、どうかしたの?こんな時間に来て。

はな
あ、うん。ちょっとさ・・・・話聞いてくれる?

西川
話?あ、もちろんいいけど。それが仕事なんだし。

はな
はは、そうだね。カウンセラーだもんね。

西川
そうそう。さ、気を楽にして、何なりとお話下さい。今日はどうされましたか?

はな
・・・・私さ、みんなを不幸にしちゃうのかな。

西川
え?

はな
タケルも、ユースケも、・・・・何だかみんなおかしくなっちゃうの。

西川
どうして?ユースケさん、何かあったの?

はな
うん、ユースケの会社ね、・・・・・負債かかえてつぶれちゃったんだ。大きなプロジェクトが失敗しちゃったんだって。

西川
・・・そうなの?あの時、それを知らせに来てたの?

はな
うん。もう、逢えないって。

西川
そうだったんだ・・・・・。

はな
私、ユースケにプロポーズされてたの。オムコに来てくれるって言ってくれたのに。

西川
それで・・・・もう終わりなの?

はな
うん。・・・私がつき合う人、みんな不幸になっちゃう。

西川
たまたまだよ、そんなの。

はな
そんなことない!昔からなの。

西川
昔から?

はな
うん。高校に入って、最初の彼は、朝会で日射病になってゲロ吐いたの。

西川
いやぁ、それは・・・・。

はな
まだあるの!2番目の彼は、修学旅行のバスで酔ってゲロ吐いたの。

西川
え・・・・。

はな
まだあるの!3番目の彼は、体育祭のリレーのアンカーでゴールした後にゲロ吐いたの。

西川
ゲロばっかじゃん。

はな
だからきっとタケルも、ゲロ吐いて事故ったのよ。

西川
それ最悪・・・・ひょっとしてユースケさんも・・・・。

はな
多分、会議でゲロ吐いたのよ・・・・それで・・・・。

西川
そんなはず無いよぉ。

はな
・・・・・よね。

西川
え?

はな
はは。なんか話したら気が楽になっちゃった。さすがカウンセラーさん。

西川
え?ホント??

はな
ホントホント、西川先生ありがとね。

西川
なら良かった。

はな
私・・・・自分の想いに自信持てなくて・・・・。

西川
自信?

はな
タケルにしても、ユースケにしても、・・・・何だか私、現実をあっさりと受け入れちゃってるみたいで。

西川
・・・・・。

はな
・・・私の想いってそんなものなのかな、って。本当に人の事を好きなっているのか、よくわからなくて。私は、ちゃんと、人の事を・・・。

西川
そんなことないよ。はなちゃんは、ちゃんと人を好きになってると思うよ。

はな
どうして?

西川
そんなの・・・目を見てればわかるよ。

はな
目?

西川
うん。ボクは、タケルとはなちゃんのことを側で見ていたからさ。はなちゃんがタケルと話をしてるときの目を見てると、あぁ、やっぱり、タケルの事が好きなんだなって思えてさ。

はな
そうかな?

西川
うん。ボクは見ていたから・・・・はなちゃんの事も、タケルの事も。

はな
はは、何か、見ていたなんて言われると、少し恥ずかしいね。

西川
はなちゃんには、はなちゃんの想い方があるんだよ。ちゃんと、はなちゃんは人の事を好きになれてる。自信持って。

はな
うん。・・・ありがと。

西川
いいえ、どういたしまして。

はな
西川くんはいいカウンセラーさんになれるよ。話し方にさ、人を安心させる雰囲気があるから。

西川
そう?ありがと。

はな
どういたしまして。

西川
--------ねぇ、じゃあ今度は、ボクの話を聞いてくれる?

はな
え?私が?いいよ、もちろん。お役に立てるかなぁ。

西川
ボクね、ずっとさ、・・・・タケルの顔を思い出せなかったんだよね。

はな
え?

西川
聞いたことない?現実が受け入れられなくて、その出来事を自分の中から消し去ってしまうって、そんな感じ。だから、いなくなったっていうよりも、タケルのコトを無理矢理忘れてて、顔すらも思い出せなかったんだ。ずっと。

はな
そうなんだ。

西川
うん。

はな
西川くんは、タケルとのつきあい長いもんね。私何かよりずっと。

西川
関係ないよ、時間なんて・・・。

はな
そんなことないよ。それだけたくさんの思い出もあるはずだから。

西川
・・・そうかな。

はな
うん。西川くんも、苦しんでたのよね。

西川
うん・・・。

はな
西川くん?

西川
ボクは・・・タケルのことを・・・。

はな
何?

西川
------うぅん、何でもない。

はな
そう?

西川
今はさ、タケルの事を思い出すきっかけがあって、逆に忘れられなくなっちゃってるんだ。

はな
思い出すきっかけ?

西川
うん。

はな
何があったの?

西川
タケルのコトを、・・・今でも想っている人にあったんだ。

はな
え?

西川
タケルのコトを、死んでいるコトも知らずに、ずっと、今でも、想っている人にあったんだ。

はな
・・・・西川くん、それ、誰のコトなの?

西川
遠山、せりなさん。

はな
誰なの、それ?

西川
ボクの患者さんでね、・・・・タケルの浮気相手なんだ。

はな
え?

西川
何で、アイツは・・・・・。(ミッフィーを掴む)

はな
西川くん・・・・。

西川
?・・・・・何か入ってる。

はな
え?

西川
ミッフィーの中に何か入ってる。

はな
何が?

ミッフィーの中からMDが出てくる。

西川
コレ、はじめから、入ってた?

はな
ううん。

西川
じゃあ・・・?

はな
タケルのMDよ。

西川
え?

はな
タケルが、私たちに遺したMDよ!ねぇ、聴ける?

西川
あ、うん!

MDをセットする西川。

Themeが流れる。

西川のケータイにコール音。


はな
西川くん、ケータイなってる。

西川
え?病院からだ。・・・・もしもし?

山盛
ぼうや?今いい?

西川
あのぉ、お誘いですか?

山盛
残念だけど、そうじゃないの。遠山せりなが、部屋にいないの!

西川
え?

山盛
あなたにも、探して欲しいんだけど、何か、心当たりないかしら?

西川
心当たり・・・・、ボクも、探してみます。

山盛
そお?夜遅くにゴメンナサイね。何かあったら、私に電話ちょうだいね!番号は・・・

西川
わかりました!何かあったら病院に電話します!

山盛
あ、ちょっと!

はな
どうしたの?

西川
遠山せりなが、病院から、消えたって。

はな
え?

-------暗転。

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