No.005
[ c・lover ]


Scene10
[ The New Warld ]


うっすらとした明かりが西川の姿を浮かび上がらせる。

CDのスイッチを入れる。
BGM【ドヴォルザーク「新世界」第4楽章】
西川、無心に指揮を振る。
山盛が現れ、一緒に指揮をふる。
気づく、西川。


西川
あぁっ!(あわてて音を止める)いつからそこにいたんですか!

山盛
なぁに?楽しかったのにぃ。

西川
いや、そういうことじゃなくて。

山盛
好きなの?新世界。

西川
え?えぇ。ココロが、落ち着くんです。

山盛
ふふふ、落ち着いてるようには見えなかったケド。

西川
無心に指揮振って、その後に、・・・なんだかスカッとして、落ち着くんです。

山盛
へぇ。わざわざ、残って何やってるかと思えば。

西川
別に指揮ふる為に残ってたわけじゃありません。ちゃんと、今日のコトをまとめてて、それで、ちょっと疲れたから。

山盛
ま、いいでしょ。ぼうやのストレス解消法なら、それはそれで。トチ狂ったわけではナイみたいだし。

西川
へんでした?

山盛
まぁ、場所が場所だけに、患者と思われても仕方がないわね。

西川
そうですか・・・・。

山盛
どう?ココは?少しは慣れた?

西川
まだ、どう話せばいいか、わかりません。

山盛
なによぉ、話しやすそうなコと話させてあげたのに。

西川
遠山さんですか?

山盛
えぇ。どう?彼女は?

西川
・・・・まだ、よくわかりません。

山盛
そお?カルテはちゃんと見た?

西川
何度も見ました。でも、よくわからないコトだらけで。家族はいないのですか?

山盛
んー、あそこに書いてあるままよ。保護者は、ポルコという訳のわからない人物。面会にも来たことないし。ただ、あのコは、愛する人を待つ。それだけよ。私もわかっているのは。

西川
私も、そう思います。

山盛
やるじゃない。十分よ。私はそこから、半年進歩はないわ。

西川
半年?

山盛
えぇ。

西川
やっぱり・・・・。

山盛
なぁに?やっぱりって。

西川
先生、ボクの話を聞いてくれますか?

山盛
え?そんなぁ、突然何を言い出すのぉ。・・・・構わないわ!おっしゃい!

西川
さっきの、「新世界」は、思い出の曲なんです。

山盛
は?なぁに?昔の女の話?

西川
いえ、違います。友人です。

山盛
そう?で?それがどうしたの?

西川
友人とは、高校で席が前後になって、彼がボクの背中つっついて「ねぇ、君、彼女いないでしょ」が第1声でした。

山盛
ぼうやはあんまり変わってなさそうねぇ。

西川
え?

山盛
続けて続けて。

西川
その後続けて、「ホラ、これオレの彼女。かわいいだろ。」って。

山盛
ヤなヤツねぇ。

西川
ボクは、それでも、友達つくるのが苦手な方だったんで、嬉しかったんですよ。

山盛
ほぉ。それでそれで?

西川
それで、彼は毎日、その彼女とキスしたとか、Bまでいったとか報告するんですよ。

山盛
何そいつ、私ならぶっ飛ばしてるわね。

西川
やっぱりですか?さすがのボクも、ちょっとうらやましく思いました。

山盛
・・・・よく友達になったねぇ。

西川
親しくなったのは、その後です。

山盛
へぇ、何か事件でもあった?

西川
えぇ。ボク、ブラスバンド部に入ってたんですよ。

山盛
何やってたの?

西川
パーカッションです。

山盛
え?

西川
ティンパニーから、ボンゴやコンガ、中にはタンバリンや鈴、なんてのもありました。何でもこなす、パーカッショニストだったんです。

山盛
要は打楽器専門だったのね。一番簡単なヤツだ。

西川
まぁ、そうですけど・・・・。

山盛
それで?

西川
それで、そのブラスバンド部に、はじめは友人も入っていたんです。

山盛
ほぉ、何かあった?

西川
ボクたちが入ってすぐに、夏の大会に向けて、曲決めがあったんです。その時、友人が1曲候補を持ってきたんです。フツウ1年生はあんまり持ってこないんですよ。

山盛
なかなか度胸があるわね。何の曲を持ってきたの?

西川
Xの「紅」です。

山盛
何だっけそれ?

西川
Xは知ってますか?

山盛
ジャパン?

西川
そうです。hideとかYOSHIKIとかの。

山盛
あぁ、あれの曲をやったの?ブラバンで??

西川
えぇ、彼は自分で各パートの楽譜を自分で書いて、持ってきたんです。

山盛
なかなかやるわね。

西川
彼は、どっちかって言うと、そういう音楽の方に目覚めていて、みんなに楽譜を配って、コレをやりましょう!ってすごい勢いだったんです。

山盛
へぇー。ぼうやと雰囲気違うわねぇ。

西川
えぇ、まぁ、性格的には、正反対な感じでした。

山盛
友達ってのは、その方が続くのよねぇ。

西川
ところがボクは、ブラスバンドで、そういうのは、どうかと思いまして、もうほとんど「紅」に決まりかけた頃に、別の曲を候補に出したんです。

山盛
ひょっとして、それが「新世界」?

西川
そうです。

山盛
感じ悪いわねぇ。・・・でもブラバンで「新世界」もちょっと違うんじゃないの?

西川
ボクは、中学の時からこの曲が好きだったんですよ。

山盛
それで?その後はどうなったの?

西川
みんなも、ボクが候補曲を出したら、やっぱりXはないだろーって寝返って、結局「新世界」に決まったんです。キレた友人は、部活を辞めて、バンドをはじめました。

山盛
よくそれで、友達になったねぇ。

西川
ボクも後味悪くって、後から彼に謝ったんです。それでも彼は、怒らずに、「オレの負けだから、やっぱりXはないかぁ」って笑うんです。「こいつはすごいな」ってあらためて思いました。それから、仲良くなって、それ以来のつきあいでした。シュミも性格も全然違うんですけど、お互い認め合える友達になりました。

山盛
んー、なかなかいい話ね。

西川
ですよね。

山盛
でも、何でその話を私にしたかったの?

西川
何でだろう・・・思い出したからです。

山盛
友達を?

西川
そうです。タケルを思い出したんです。

山盛
へぇー、で、彼は今は何をしているの?

西川
彼は・・・・今は、もういません。

山盛
・・・・亡くなったの?

西川
えぇ、事故で。

山盛
それで、思い出の曲なんだ。

西川
ちょうど、半年前になります。

山盛
・・・・そうなんだ。

西川
遠山さんと、同じ頃です。

山盛


西川
遠山さんが、ここに来たのと、同じ頃です。

山盛
それが、どうかしたの?

西川
あの子が、待っているのは、ボクの友人です。

山盛
・・・・え?

西川
ボクは、遠山さんと、・・・・・いや、遠山さんは、それ以上に、彼のコトを想っているのです。

山盛
彼のこと、詳しく教えてもらえる?彼女については、そういう状況的なモノが何もわかっていないの。彼女の今の状態に至った原因を突き止めなければ、治療の方向が見いだせないから。

西川
でも、はっきりとは・・・・遠山さんと、タケルの関係はわかりません。

山盛
・・・・あなたなら、彼女を手助けすることが出来ると思うわ。

西川
どうしてですか?

山盛
さぁ?カンよ、カン。

西川
はぁ・・・。

山盛
そうそう!今度いっぱいどお?飲みながら相談のるわよ!何なら、そのまま、オトナの時間に突入しちゃっても、いいんだから・・・・。

西川
ボク、お酒飲めないんですよ。

山盛
んー、私があなたを丸飲み!

------- 溶暗。



暗闇に、ミッフィーを抱いたせりなが浮かび上がる。


せりな
タケル・・・・どうして来てくれないの?私のコトを忘れちゃったの?・・・・ねぇ、タケル・・・・。

タケル(声)
------ごめんな、待たせて。

せりな
・・・・・やっと、来てくれたんだ。ねぇ、赤ちゃんの名前、もう考えてくれた?・・・・・そう。まだ考え中か。私もまだ考え中なの。・・ねぇ、次は-------タケル?・・・・どうしたの?どこにいるの?もう行っちゃったんだ。・・・・・わかってる。がんばってね、タケル。

-------暗転。

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