No.001
[ m.]


Episode03

memory(シンとサヤカ)


シンの部屋。
カバンを持って帰ってくるシン。


サヤカ
どうだった?

シン
見ての通り。中も全部入ってた。

サヤカ
違う。女のヒト。

シン
え?ちょっと変わった、占い好きな人だったよ。

サヤカ
へぇー。よかったねぇ。

シン
なんだよそれ。

サヤカ
なかホントに大丈夫なの。?

シン
大丈夫だったよ。確かめた。

サヤカ
じゃあ写真は?

シン
あぁ、コレ。(フィルムを出す)

サヤカ
は?それ?まだフイルムじゃん。現像しないの?

シン
うん。

サヤカ
何で?

シン
見るのが怖くってさ。

サヤカ
どういうこと?

シン
サヤカが、化けて写ってるかもって。

サヤカ
死んでないってば。

シン
今はね。

サヤカ
ひどーい。シンのためには、私が死んじゃった方がいいんだよね。

シン
イヤだよ。そんなの。

サヤカ
でもさー、私が死んだと思えば、

シン
思えないよ。

サヤカ
何で?

シン
生身のサヤカとはずいぶん話してないけど、今こうして別のサヤカと話をしてるだろ。

サヤカ
私は私だよ。

シン
そういわれても。

サヤカ
何?

シン
ホントのサヤカは病院で寝てるはずだろ。オレ、一応、現実をきちんと受け止めたつもりなんだ。でも、こうやって、もう1人のサヤカがココに現れて。かといって、毎週病院に行くと、やっぱりソコに何もしゃべらないサヤカがいて。

サヤカ
困惑してる?

シン
してるよ。オレは頭がおかしくなっちゃったのか?

サヤカ
そんなことないよ。・・・・・ねぇ、コレ出発するときに撮ったんだっけ。

シン
そうだよ。車の前で、行く前に。

サヤカ
楽しい旅行になるはずだったのにね。

シン
うん。

サヤカ
また行き直したい?

シン
・・・・・・。

サヤカ
あれ?何枚撮った?

シン
え?1枚・・・だけだよ。

サヤカ
そっか。撮れなかったんだ全然。

シン
行こうとしてたトコロだったからね。

サヤカ
もっと撮りたかった?思い出として。

シン
思い出・・・・?そうだね。

サヤカ
終わるはずだったもんね。あの旅行で。

シン
--------。

サヤカ
・・・・続いちゃってるね。今でも私、ちょくちょく来て、シンの生活の邪魔しちゃって。

シン
-----ねぇ、何であの旅行で終わりにするんだったか覚えてる?

サヤカ
え?何でって。うーん、飽きちゃったんじゃないの?

シン
誰が?

サヤカ
えー、私が?

シン
切り出したのはサヤカだろ。

サヤカ
そっか。じゃ、私が飽きちゃったんだ。

シン
何で飽きたんだよ。

サヤカ
え?忘れた。今は別にそうは思わないよ。あるイミ新鮮だよね。コノ関係。

シン
まぁ、悪くはないけど・・・。

サヤカ
けど?あ、何?ヤリたいの?

シン
は?

サヤカ
ゴメンね。私の肉体はココにないから出来ないの。何だったら病院の私とシテいいよ。ムリなら今は、ソウイウお店行くの許すよ。

シン
そういうことじゃなくってさ。

サヤカ
じゃあ、何に不満があるの?

シン
いや、ないから、いい。

サヤカ
ホント?このままでいいんだ。

シン
何でそういう言い方するんだよ。

サヤカ
あ、これ、何?(カバンから手紙を出す)

シン
あっ。

サヤカ
サヤカへ。コレって私に?

シン
他にサヤカはいないよ。返して。

サヤカ
読んでイイ?

シン
だめ。返してってば。

サヤカ
どうして?私に書いたんでしょ。

シン
いや、もう読まないでいいんだ。

サヤカ
読んじゃおーっと。(と、開ける)

シン
ちょっと、やめろよ。

サヤカ
イイじゃん、イイじゃん。昔の手紙読むのってそのころの気持ちがわかってドキドキするね。

シン
わからなくていいから。

サヤカ
!-------過去にしたくなかった。出来たらずっと。・・・・何?これ。

シン
旅行の帰りに、渡そうと思ってたんだ。

サヤカ
何で、とっといたの?この手紙?

シン
いつか捨てようと思ってた。

サヤカ
そう。

シン
・・・・ゴメン。

サヤカ
何?

シン
ゴメン、こんなコトになっちまって。

サヤカ
どうしたの?何言ってるの?

シン
・・・・オレさ、ワザと事故ったんだ。もうサヤカがオレに対して何にも思っていないってわかってたから。

サヤカ
シン?

シン
オレ、あの旅行に行く前から一緒に死のうって考えてた。旅行が終わったら、全てサッパリ、全てを終わりにしちゃいたいって。

サヤカ
じゃー、何で行く前に事故っちゃったの?

シン
考えただけだよ。結局オレは心中なんて出来ない臆病者だってわかってた。そんなこと、オレには出来ないって。でも、あのときその手紙を渡すのが怖くなって。

サヤカ
じゃあ、どうして?

シン
突発的だったんだ。・・・・・あの時、となりで見ていて思ったんだ。車の助手席のサヤカの笑顔を見ていて、それを、思い出にしたくないって。過去のモノにしたくないって。この瞬間を永遠に残してしまいたいって。そう思ったら・・・・・。

サヤカ
シン・・・・。

シン
ゴメンな。オレの臆病さが、身勝手さが、サヤカを、こんな風にしてしまった。ゴメン。

サヤカ
-------。

シン
でもさ、今のオレは・・・・、今のこの状態を望んではいないけど、オレは・・・・、

サヤカ
-------。

シン
たとえ今のサヤカがニセモノでもかまわないんだ。オレの思い出が作り出した虚像でもかまわない。だから、オレの前から消えてしまわないでくれ。

サヤカ
私は、ニセモノなんかじゃないよ。シンの作り出した虚像でもないの。今の私は病院に寝ているけれど、こうしてシンに会いに来ている私も本当の私の姿なの。

シン
なんだってかまわない。いつか記憶の中にあるサヤカの姿を忘れてしまいそうで怖いんだ。思い出がそのうち過去に変わってしまう。そうすると、もうサヤカが現れなくなるんじゃないかって思うと、怖くなるんだ。

サヤカ
忘れちゃうの?

シン
忘れたくないんだ。これからも。ずっと。

サヤカ
そう?

シン
あぁ。

サヤカ
よかった。

シン
・・・・。

サヤカ
でも、私ね、もう来られなくなっちゃう。

シン
え?

サヤカ
もう、ココに来られなくなっちゃう。

シン
どうして?

サヤカ
どうしても。

シン
消えてしまうの?

サヤカ
うぅん。誰も、消えてなくなったりしないよ。私は、来られなくなるだけ。

シン
どうして?

サヤカ
どうしても。だから・・・・

シン
何?

サヤカ
今度は、シンが私に会いに来て。

シン
え?

サヤカ
シンが私に会いに来るの。いい?

シン
・・・・・どういうこと?

サヤカ
じゃあね。待ってるから。・・・・・愛してるよ。

シン
?・・・・・・・サヤカ?サヤカ??

振り返るとそこにサヤカはいない、

と、ケータイにコール音。


ケータイを取るのをためらうシン。

出ようと思うが、脳裏によぎる、様々な憶測。

手に取る事が出来ない。





おそるおそる、ケータイを手に取るシン。


シン
・・・・・・もしもし?
-------。

言葉が出ないシン。


シンの目に涙。

-------暗転。


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