No.001
[ m.]


Episode03

memory(シンとサヤカ)






【 memory 】




【 思 い 出 】





シン
・・・・・・ただいまぁ。

誰もいない薄暗い部屋。

シン
--------。

カセットデッキを出し、録音を始める。

シン
--------7月20日。今日はとても、ツイテない。久しぶりだ。こんな日は。こないだの・・・・1ヶ月前に盲腸になり、綺麗な看護婦さんに優しく毛を剃られてる時に、なぜだか看護婦さんが少しほほえんでた時以来のイヤな日だ。だいたい今日は休日勤務だった。納入が遅れたのは私のせいではないのに。まだ免停中につき車に乗ることが出来ないので、歩いて出先に行ったら、夕立ちがきて思いきり濡れた。もともと傘なんてキライだし、持っていかない私が悪いと言えば、悪いんだけど。濡れた後、寒くなって、どうしようもなくおしっこがしたくなり、仕方なく道ばたで用を足していると、足下に置いて置いたカバンを取られた。スグにでも追いかけようと思ったが、こういうときに限ってアレは滝のように出続け、なかなか終わらない。それで、結局、カバンを取られてしまった。書類は渡した後だからよかったけど、おかげで大切な物をたくさん無くしてしまった。こんな日は、とっとと寝てしまいたいと思う。

テープを止め、巻き戻す。

巻き戻ったテープをかける。



「--------7月20日、今日はとても、ツイテない。久しぶりだ。こんな日は。こないだの・・・・1ヶ月前に盲腸になり、綺麗な看護婦さんに優しく--------

音が途切れる。いつの間にか後ろに女(サヤカ)が立っている。

サヤカ
まーた、ヘンなことして。

シン
・・・・日記を録音するのって、別に変なコトじゃないよ。

サヤカ
そう?なんか、疲れてなーい?

シン
あぁ、少しね。

サヤカ
顔色悪いし。生きてないみたい。

シン
--------濡れちゃったんだ。雨が降ったろ。

サヤカ
何でカサ持ってかないの?

シン
キライなんだよカサって。

サヤカ
なら、おとなしくしてればいいのに。

シン
仕事があったから。仕方がないだろ。

サヤカ
ふーん。大変だね。休みの日なのに、濡れてまで。

シン
・・・・まぁ、仕事だから。

サヤカ
お疲れさまでした。

シン
ありがと。

サヤカ
もう寝ちゃうの?

シン
・・・・え?

サヤカ
さっき、テープに。

シン
あ、いや、サヤカがいるし、もう少しあとにするよ。

サヤカ
ご飯は?

シン
食欲ないから。

サヤカ
食べないの?

シン
あぁ。

サヤカ
ガリガリになっちゃうじゃーん。

シン
大丈夫だよ。・・・・今日、来てくれると思ったよ。

サヤカ
何で?

シン
最近よく来てくれるから、何となく、わかってきた。

サヤカ
おっ!今ごろ、私の心が読めるようになってきた?

シン
そんな言い方しないでよ。

サヤカ
でっ。何があったの?

シン
いや、いつもの通り、ツイテないことがいくつか。

サヤカ
どうしたの?

シン
休日出勤。

サヤカ
仕方がないでしょ。

シン
それで突然、雨に降られた。

サヤカ
それは聞いた。ほかには?

シン
・・・・えーと、あのさ、その時に、カバンを取られた。

サヤカ
えーっ!何で!どうして!どこで!?

シン
え?・・・・ちょっと油断して、ぼーっとしてたら、道端で。

サヤカ
お金も取られたの?

シン
あ、あぁ、うん。2・3万入ってた思う。

サヤカ
他には?

シン
んー、後は会社の書類関係かな。

サヤカ
なくなってもいいヤツ?

シン
よかないけど個人的なものばっかり。会社には迷惑かかんないと思う。

サヤカ
無責任だねー。まー、でもたいしたもの入ってなくてよかったね。

シン
いいんだか、悪いんだか。・・・あ!でも、データが入ったMO盗られちゃったから、やっぱり始末書かなぁ。

サヤカ
えー、また始末書ぉー。

シン
仕方がないだろ。

サヤカ
今年もう2回目じゃないの?こないだの「二日酔いで無断欠勤」に続いて。

シン
あれは上司が悪いんだよ。オレは飲めないのに無理矢理飲ませるからさ。

サヤカ
人のせいにするんじゃないの!おねーさん達にでれでれして、調子にのって飲みすぎただけでしょ!

シン
なんで知ってんの?

サヤカ
なんでも知ってんだから!

シン
まぁでも、幸いなコトに今回も一大事にはなってないからイイってコトで。

サヤカ
・・・・シンていっつももそうだよねー。

シン
何が?

サヤカ
よくドジとかやって、ツイテないこと多いけど、どん底の状態にはいつもならない。

シン
確かに。オレも不思議だよ。事故っちゃっても、オレだけ1人で助かっちゃったりさ。

サヤカ
・・・・シンは運が強いのよ。

シン
だったら始めから何も起こらなきゃいいのにな。

サヤカ
別に、シンが悪い訳じゃないじゃん。

シン
--------。

サヤカ
他は大丈夫だったの?

シン
え?あ、あと--------、

サヤカ
何?

シン
写真を取られた。

サヤカ
はっ?カバン盗られてるマヌケな姿をパシャって?

シン
いや、そうじゃなくて、撮った写真を、取られたんだ。

サヤカ
え?

シン
・・・・・サヤカと二人の。あの旅行で撮ったヤツだよ。

サヤカ
えー。ひどーい。二人の写真無くすなんてー。・・・・愛がもうないんだ。

シン
そんなわけないだろ。オレが、

サヤカ
何?

シン
いや、何でもない。

サヤカ
・・・・・・出てくるといいね。

シン
うん。

サヤカ
・・・・ねぇ。

シン
何?

サヤカ
今、オレが、のあと何言いかけたの?

シン
別に。何でもないって。

サヤカ
どうしてそういうことちゃんと言ってくれないの?

シン
・・・コトバにすると、ウソっぽいだろ。

サヤカ
何が?

シン
いいだろ、もう。

サヤカ
だから、何でそうなるの?

シン
イヤなんだよ。今、言うのが。

サヤカ
前は言ってくれたのに。イロイロと。

シン
だってほら、今ココにいるサヤカは、本当のサヤカじゃないだろ。

サヤカ
は?何いってんの?じゃあ私は誰なの?

シン
オレが作り出したニセモノなんだろ。・・・・でもオレ、時々来てくれるニセモノのサヤカを期待してるんだよ。でもさ、それじゃ・・・・・

サヤカ
いいじゃん、そんなコト。ココは、今、2人の空気が流れてるんだもん。

シン
2人の空気?

サヤカ
そう。現実から離れててもいいじゃん。2人の空気。2人の時間。2人の会話が今ココにあるでしょ。

シン
確かにオレは今サヤカと話してるけど。

サヤカ
イヤなの?私来ない方がよかった?

シン
・・・・・来て。

サヤカ
ならいいの。コレで。

シン
ごめんな。こんなコトになっちゃって。

サヤカ
ごめんね。こんなコトしか言えなくて。

シン
・・・・・ありがとう。

サヤカ
ごめんね。

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